関西DX戦略2025

公益社団法人 関西経済連合会

近畿経済産業局長賞株式会社ゲートジャパン

代表取締役 西澤耕一氏

小さな成功体験や
デジタル化を積み重ね、
大きな改革につなげる

精密金型・金属部品などの設計から製作を手掛けるファブレス会社の株式会社ゲートジャパン。多品種・小ロット・短納期・低コストを掲げ、国内外の提携工場と協力し商品を提供をしている他、2024年3月から自動機(FA装置)の設計、製造も開始した。また、レーザーマーカーなどの装置(機器)の輸入・販売や、DX支援事業として、小規模ながらコンサルティングやシステム開発も行っている。
少子高齢化など、多くの社会課題を解決し、会社を成長させるためにはデジタル化、DXは避けては通れないと考えているゲートジャパン では、「ゲートジャパンにおけるDXとは、一番は、顧客サービス向上です。早く、安く、高品質を実現するための手段なんです」と明確なコンセプトがある。
ファブレス業務は熟練(経験と知識)が必要で、単純に人を増やして対応できるものではない。案件の管理や調整も複雑で客先や案件ごとに違っており、人が介在しないとできない業務が沢山ある。ゆえに、人にしかできないことの効率を高めるため、DXが必要だとされている。
過去には、計画や判断、ミスの対応に多くの時間を要していたが、ゲートジャパン では“DXで見える化する”ことで大きく改善できると考えられている。

代表取締役の西澤氏は、「事業が好調となり、案件の増加にともない、見積・受発注情報と紙図面が増えました。ただ案件の処理には、関係個所との連携や調整、図面を読み解く熟練が必要で、単純な増員での対応が難しく、ミスの発生、残業の増加、紙図面の保管場所の整理整頓が追い付かず、顧客サービスが低下して会社の成長を阻害し始めたからです」とDX化促進のきっかけを話す。
また、現・執行役員のDX推進リーダーが、中国の展示会などで急激なITの進化を目の当たりにして、危機を感じたのも一つの背景だ。

ゲートジャパンでは、2017年からペーパレス化を実施、ドキュワークスと言うドキュメント管理システムを導入し紙資料を極力廃止した。
このシステムを活用し、作業指図書を共有し業務の進捗を管理することで、作業効率が上がり作業の漏れや遅延が減ったという。
また、2020年からRPAの導入とシステムの内製化を開始。手作業で行っていた資料へのバーコード貼付をボタン一つでできるようにする等、多くの作業を自動化した。
さらに、プログラミングができる人材の採用で、 Pythonを使用したRPAで、データ連携も含め高度な自動化、省力化も実現した。

取り組みが進むにつれ、既存のシステムや業務の改善では新たに難しい課題に直面するようになり、本格的なDXを念頭に、2022年頃から基幹システムの企画に着手。同社事業の強みであるノウハウとネットワークを活かし、B to B to Bのビジネスを拡大させる基幹システムの構想を2023年に立てた。大きなシステム、サービスの構築となるため、専門性の高いソフトウェアベンダーに協力を依頼し、2024年4月にフェーズ1となる基幹システム「Genie-us」をローンチ。見積から売上まで、案件の状態が一目でわかり、 RPAで自動化した要件や、できなかったアイデアを盛り込み完成させた。
ゲートジャパンでは現在、フェーズ2に向けた取組が進行中である。これは、基幹システムからメールを自動送信するだけでなく、顧客からの見積・発注依頼メールをGmailのタグ付けと共有機能を使い、案件をチームで分担、管理。結果、現在の状態を見える化でき、ミスや業務の偏りが無くなった。また、協力工場への手配(見積・発注・納品)をWebシステム上で完結することで、メールの転記を無くし、基幹システムで依頼状況が把握でき納期遅延や急な変更にも、即座に対応できるようになった。
西澤氏によると、「決して大きなこと、リスクの高いことをしているのではなく、日々の取組として、【Small(小さくやる)、Speedy(早くやる)、Smart(賢くやる)】、3つのSを意識して、大ごとにせず、不完全であっても小さくやってみる、軽いシステムを早く投入し効果を図り、スマートに判断(賢く)することを心掛け進んでいる。改善による小さな成功体験、デジタル化を積み重ねることで、大きな改革につながりました。」

導入効果としては、ペーパーレス化でプリンターからの印刷枚数が全社で90%以上の削減を達成。2017年の取組当初に比べ、作業効率が50~60%向上した結果、従業員数はそのまま、残業はほぼゼロで、引き合い件数が2倍、売上が1.8倍になった。
また、ITを使った成功体験が積み重ねられ、改善・改革の意識が広まった。離職率が下がり、勤務年数が上がったことで知識や経験が蓄積され、人にしかできない仕事の質が向上した。
もちろん社内には、このままDXが進み自動化されたら自分たちの仕事が無くなるのでは、という心配の声があったのも事実。しかし、仕事全体の流れが数値でも見えるようになり、頑張ろうと思った社員も多勢いたという。
さらに協力会社からは、メールからWebシステムとなり管理の手間が減り、便利になったと高評価をもらっている。

現在ゲートジャパンでは、基幹システムの「Genie-us」の機能拡張を計画している。具体的には、“協力工場側のさらなる機能向上”、“顧客が管理しやすく便利なWEBサービスの提供”、“海外顧客のための為替機能追加”であり、「このGenie-us構築で得られたノウハウ、DX推進の経験をお客様に還元したい」と構想は広がっている。
最後に、「DXに困られているお客様には、ベンダーやコンサルとは違い、DX推進をしている人達、ユーザー側の立場で“伴走”するような支援サービスを行っていきます。私たちのビジネスモデル『Genie-usシステム』を提供する事業を行いたいと考えています。調達や購買に精通している私たちだからこそ、一緒に成長できるサービスが提供できると思います」と西澤氏は結んだ。

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