会長コメント
年頭所感
2006/01/01明けましておめでとうございます。
旧年中は当会の活動にご指導ご鞭撻をたまわり、誠に有り難うございました。
1.経済・社会の大変革期を迎えて
昨年を振り返ってみますと、世界経済は、原油価格高騰などの不安要因を抱えながらも米国、欧州、アジア諸国それぞれ着実な成長を遂げました。一方わが国経済も、構造改革に伴う調整期をほぼ終え、企業部門を中心として景気回復が定着しつつあります。
こうした中、関西経済は、生産・消費・投資・雇用それぞれ順調に改善し、多くの経済指標で全国を上回る好調を示しました。中でも投資分野では関西企業の新 規工場立地や事業拠点拡充が明確な域内回帰を示し、関西の魅力が見直されたという意味で明るさが増した年であったと言えます。
しかしながら、こうした景気拡大の中にあって忘れてはならないのは、今われわれを取り巻く国際社会、産業、企業経営といった経済社会の基盤となるものが大 きな変革期にあり、関西地域、関西企業はそれに対応して発展を続けるための「革新」を求められているということであります。
(国際社会~「アジアは一つ」)
まず国際社会の変革とは、アジア諸国の急速な発展と各国間の結びつきの深化によって、かつて岡倉天心が示した「アジアは一つ」という考え方がまさに実践段階に入ったということであります。
岡倉天心は当時、発展段階も社会制度も異なっていたアジア地域を一つに結びつけるべきであり、その鍵として東洋思想の持つ共通性を述べた上で、わが国をア ジアと欧米の結節点と位置付けました。その点で、世界各国・各地域が思想・宗教や社会制度で様々な対立を抱える現代において、アジア地域が多様性を保ちな がらも深い相互理解を持って発展することは、国際社会のあり方に新たな展望を拓くことにつながります。さらにその際、わが国はそうしたアジアの発展を力強 く後ろ押しし、アジアと米国・欧州等の他地域を結びつける役割を果たしていくべきではないでしょうか。
(産業の変革~「新しい産業コンセプト」)
次に、産業の変革とは、産業革命以降発展してきた様々な分野を再編成し、新たな価値創造に向かわせる新たな産業のコンセプトが現れつつあるということであります。
ロボット産業を例にとれば、最初はモノづくりの集積として始まったものが、今やIT、さらにはユビキタスといった新しい技術要素や着想を次々と取り込み、 機械、情報通信、医療、サービスといった様々な産業を統合して新たに方向づける産業再編成のエンジンと言えるものになりつつあります。さらに、知の大交流 によって産業の高付加価値化を牽引する観光産業や、新たな付加価値を様々な産業に生み出す高品質繊維、化学材料をはじめとする新素材産業も、そうした新し い産業コンセプトの一つであることは言うまでもありません。
(企業経営~「新たな企業のあり方」)
さらに、企業経営における大変革とは、経営統合や企業買収の急速な拡がり、社会的責任の高まり等によって新時代における企業のあり方が問われていることであります。
かつてわが国企業にとって比較的例外的な経営手法であったM&Aは現在、技術やブランド力をスピーディーに手に入れる方法として当然のものとなり つつあります。したがって今日、すべての企業がM&A、被M&Aの可能性を視野に入れて戦略を検討し、そのための株主価値創造を考えるこ とを求められるようになりました。また一方で企業の命運を本当の意味で握っているのは顧客と社会であり、消費者パートナーシップや社会的責任の完遂も企業 にとって重要課題であることは論を待ちません。企業は今こそこれら2つの課題に応える「新たな企業像」を確立し、そのための企業理念の確立と人づくりを始 めなければならないのであります。
2.大変革への挑戦を先導する関西
こうした経済・社会の大変革の時代にあたって、関西地域や関西企業がなすべきことは、国際社会、産業、企業経営それぞれの変革に対応して、新しい価値を創り出し続けるための「革新」を、わが国全体を先導する形で進めていくことに他なりません。
具体的には、「アジアは一つ」の時代を先取りするために、アジア各国の交流・連携を促進し、その結節点となることを始め、次世代のわが国産業をリードする 新たな産業コンセプトを創造し、優れた戦略と社会的信頼を兼ね備えた新たな企業像を目指して実践を重ねることが求められることになります。
こうした大変革に対応した「革新」を関西が先導して成し遂げることができれば、財政構造危機や少子高齢化等によって大きな将来不安の中にあるわが国の将来全体に大きな希望をもたらすことができるのではないでしょうか。
3.2006年の関経連の活動
こうした問題意識の上に立って、関経連は本年、経済社会の大変革に対応する「革新」を先取りする意味から、5年先、10年先を見据えた発展の芽を創るとと もに、これまで取り組んできた事業を「育て」、「活かす」ことを基本とし、「アジア大交流促進」「産業革新リーダーシップ確立」「企業、社会、国のあり方 確立」の三つを中心に各活動を加速してまいります。
(アジア大交流の促進と独自性強化)
第一に、アジア大交流時代を自ら先導し、次代のアジアづくりに貢献するために、交流事業を展開しアジアにおける関西独自の役割強化を進めます。具体的に は、アジアの多様性を前提にした上で各国・地域の相互理解をより一層深めるため、今年3月にアセアン諸国を訪問するなど、これまで培ってきた連携交流を拡 大・深化させるとともに、チャイナリスクやインドの台頭など、アジア情勢全体を踏まえた企業・地域のアジア戦略についても検討、策定いたします。
また、アジア金融市場の統合を視野に入れて関西がアジア最大の金融センターになることを目指す意味から、アジアの金融システム強化の調査・研究を行う「アジア金融システム・関西研究会」を設置し、各種フィジビリティ・スタディを行ってまいります。
さらに、アジア交流の重要なインフラとなる関空の2期事業については、2007年の第2滑走路供用に向けて引き続き取り組むとともに、国際物流ネットワークの強化に向け、日本と中国間の深夜貨物便を活用した貨物輸送のリードタイム短縮を目指した実証実験を年内に行います。
また、アジアとの大交流の際に重要となる関西自身の独自性を育てる伝統文化振興にも引き続き取り組み、地域の魅力を継承し、豊かな心を備え、堂々と国際社会を生きる次世代の青少年の育成を支援する「上方伝統芸能教室(仮称)」の開設(2008年春予定)を進めます。
(新たな産業のリーダーシップ確立)
第二に、産業界が新たな産業コンセプトの出現による変革期にある中で、関西がわが国産業の新たな方向づけを先導していくために、関西独自の競争資源を活かした産業革新リーダーシップの確立を図ります。
具体的には、これまで個別に推進してきた「情報通信技術(IT)」や、「ロボット技術(RT)」の振興、「北梅田まちづくり」を統合し、それらの技術の具 体化を図り、関西の優位性を確立する切り札となるプロジェクトとして、「北梅田ユビキタスシティ構想」の検討を進めて、北梅田地区を国際的な「ユビキタス 先進地」に育てあげてまいります。あわせてロボット産業の飛躍に向け、生活支援ロボット産業の拠点形成を目指し、都市再生プロジェクトの実施計画における 4分野8重点プロジェクトの着実な推進を図ってまいります。さらに、学研都市の「けいはんな新産業創出・交流センター」に、新事業創出支援組織「アイ・ア イ・エス」のノウハウなどを加え、知的クラスター創成事業をはじめとする研究成果の事業化支援を強化してまいります。
また、関西の強みを活かし、他産業にも波及効果が期待できる観光産業の振興については、関西国際観光推進センターによるインバウンド促進の取り組みを京都・大阪・神戸をはじめ域内の広域連携によって強化してまいります。
(新たな企業、地域、国のあり方発信)
第三に、企業経営の大変革期に対応できる経営や人づくりをはじめ、今後のわが国においてあるべき企業、地域、国の姿について関西から積極的に発信、実践してまいります。
具体的には、昨年から関西経済界全体で取り組んできた基本的問題を考える活動の検討の上に立ち、経営手法の多様化や企業の社会的責任の強まりに対応した新 たな時代における企業のあり方、人づくりのあり方の「関西モデル」を作り上げ、行動していきたいと思います。特に、関西の強みを活かした経営と「人づく り」の進化という点では「関西ふるさと懇話会」の活動の拡充を図るほか、アジア・ビジネススクールやインテリジェントアレーといった人材育成事業を積極的 に展開いたします。さらには、関西をわが国最高の経営人材育成クラスターとするべく、ビジネススクール機能の集積と相互のネットワーク化を進めます。
また、国と地域のあり方については、関西の産官学で構成する関西分権改革推進委員会にて、地域の自立的運営を行う「関西広域連合」の具体化に向けた検討を 本年3月までに終了し、設立準備を進めてまいります。また、本格的な「道州制」実現に向けた検討や、企業・個人・地域の活力を引き出す国・地方の改革に関 し、タイムリーに提言してまいります。
(おわりに)
当会は本年10月1日に設立60周年を迎えます。この60年間の活動の成果は、会員企業はじめ、政府や自治体、学界、マスコミ、広く社会の皆さまのご支援 の賜物であります。そのことに深く感謝申し上げるとともに、この節目を機に、皆様とのコミュニケーションを一層密にし、関経連へのご期待・ご要望を真摯に 受け止めて努力したいと考えておりますので、本年も倍旧のご支援をお願い申し上げます。
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