会長コメント

年頭所感

2012/01/01

公益社団法人 関西経済連合会
会長 森  詳 介


 謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

 昨年はわが国にとって、歴史的な激動の1年でした。東日本大震災の被害は苛烈を極め、今なお復興に向けた道筋は見えていません。震災は、東京一極集中のリスクやサプライチェーン戦略の脆弱性も顕在化させ、社会や産業のありかたを根本から揺るがしました。
 さらに、欧州の債務問題や歴史的な円高、タイの大洪水など、わが国経済はかつてない逆風に晒され、企業も戦略の大きな見直しを迫られた1年でありました。
 しかし、この国難にありながら、中央の政治は衆参ねじれの頸木から逃れることができず、危機感、スピード感に欠けています。デフレや財政危機といった構造的な問題も棚晒しのままで、わが国の先行きは不透明感を増しているのが現状です。

 わが国にとって、震災復興と新しい国づくりが喫緊の課題です。
 関経連は、昨年来の復旧・復興支援を強化します。また関西広域連合とともに、関西自身の防災強化と、中央の権限や財源を引き受ける体制づくりを進め、国全体のセキュリティー向上に取り組んでまいります。
 そして何より、それらの源泉となる経済成長が重要です。関経連は、これまで以上に、関西から日本の経済成長を牽引する取り組みを強化してまいります。

 昨年末の「関西イノベーション国際戦略総合特区」の指定は、新産業の創出や産業競争力強化に向けた大きな足がかりとなるものです。
 関西は、うめきたのナレッジキャピタル、けいはんな学研都市、神戸医療産業都市、そして世界トップレベルの研究を進める大学やオンリーワンの技術を持った企業などの集積地であり、特区を活かしたイノベーションの可能性は、私たちの前に無限に広がっています。
 関経連は、関西中に存在しているイノベーションの種を掘り起こし、特区の力で大きく育てる推進役として、さらには最適な地域連携を探り、関西全体で最大限特区を活用するためのコーディネーター役として、関西・日本の将来を切り拓くことに全力を尽くします。

 また、成長著しいアジアとの関係強化が、ますます重要になっています。
 特に中国との関係は、わが国のグローバル戦略上、生命線と言っても過言ではありません。今年、日中国交正常化40周年の節目に際し、関経連をはじめとする関西経済7団体は、大型の訪中代表団を派遣します。両国の産学官連携による、水、スマートシティ分野での事業機会を探るフォーラムの開催など、日中の友情と経済連携を一層強固なものとする取り組みを進めてまいります。

 さらに、経済のグローバル化が進展する中で、わが国にとって自由貿易体制の整備が不可欠です。昨年11月に、政府がTPP(環太平洋経済連携協定)交渉への参加を決断したことは、わが国の将来に大きな意味を持つものでした。関経連は、昨年末に発足したアジア太平洋研究所(APIR)とともに、わが国の競争環境にかかわる調査研究を進め、それに基づく政策提言を通じて、TPP交渉の進展を力強く後押しします。

その他にも、関西・日本の発展を支える高度人材の育成など、多くのことに取り組んでいかなければなりません。関経連は今年1年、会員の皆さまとともに、関西さらには日本のために、「実行する関経連」として活動を強化してまいります。
 本年も倍旧のご支援をお願い申し上げます。