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会長コメント

第54回定時総会 森会長挨拶

2016/05/23
公益社団法人関西経済連合会
会長  森  詳 介


 第54回定時総会の開会にあたりまして、一言ご挨拶させていただきます。
 はじめに、先月の熊本地震によりお亡くなりになられた方へのお悔やみと、被災されました方々へのお見舞いを申し上げます。今も多くの方々が避難生活を送られていることに、本当に心が痛みます。
 今から21年前の阪神・淡路大震災の際、関西は全国からの多くの支援に助けられ、そのおかげで、その後、「創造的」と言われるほどの復興を果たしました。そのことを、私たちは忘れてはいけません。
 関経連では先月、熊本地震支援本部を設置しました。被災地の一日も早い復旧・復興のために、できる限りの支援を行いたいと考えております。
 すでに関経連として義援金をお送りしておりますが、会員のみなさまにも、赤十字を通じた義援金の拠出をお願いしております。どうぞよろしくお願いいたします。
 義援金以外にも、被災地のためにできることを考えてまいります。東日本大震災の際には、ボランティアバスを派遣して瓦礫の処理をお手伝いするなどの支援を実施しました。九州経済連合会としっかり連携して、被災地のニーズに沿った支援を実施したいと考えております。西日本経済協議会でも、支援を考えてまいります。
 会員のみなさまには、今後も、関経連の被災地支援に対するご理解、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。

 それでは、総会の開催に先立ち、この1年を振り返ってみたいと思います。
 昨年の関西経済は、全体として緩やかな回復基調にあったと思います。好調なインバウンドにより消費が底上げされておりますし、雇用環境も、完全雇用に近いところまで改善されました。
 ただし足元では、中国経済の減速などの影響で企業マインドが低下しております。昨年末 くらいから先行きの見通しにくい状況が続いており、先月の熊本地震の影響で、その度合いがより強くなったような印象であります。
 今年1月には日銀がマイナス金利の導入を決定しました。政府も、過去最高となる今年度予算を編成し、それを前倒し執行して景気を支える意向を示しております。今週開催される伊勢志摩サミットでは、世界経済の安定化に向け、財政出動にかかわるメッセージが取りまとめられるとも報じられております。
 短期的には、こうした金融政策、財政政策の効果が表れてくると見ております。ただ中長期で見れば、わが国は、人口減少や高齢化、財政再建といった構造的な課題を避けて通ることができません。
 その点で、政府の掲げる「地方創生」や「一億総活躍社会の実現」が大きな鍵となります。関経連としても、引き続き、政府と歩調をあわせて、関西経済の底上げに取り組んでまいりたいと思います。
 なお、このところ声が大きくなっております消費増税先送り論には、関経連として、明確に反対したいと思います。
 これまでも事あるごとに声をあげてまいりましたので、ここでその理由を重ねて申し上げることはいたしませんが、目先のことにとらわれて次の世代にツケを先送りしてはいけないということであります。国家百年の計として、予定通り来年4月から消費税率を10%に引き上げるべきであり、政府には、そのための環境整備を進めていただきたいと思います。

 関経連の活動という点では、昨年度は、着実に前進できた1年であったと思います。
 昨年7月には、関西財界セミナーの議論を踏まえて、関西健康・医療創生会議を創設いたしました。3月には、好調なインバウンドをさらに伸ばすために、関西国際観光推進本部を立ち上げました。
 健康・医療産業と観光産業は、これから関西経済の大きな柱に育ってもらわなければならない産業であります。その2つにおいて、関経連と関西広域連合が中心となってオール関西の推進体制を整えたのは、非常に良かったことと考えております。
 リニア中央新幹線の全線同時開業や北陸新幹線の大阪までの早期延伸につきましても、なかなか目には見えづらいのですが、関西をあげた粘り強い要望活動が奏功して、政府、与党の中に私たちの思いが浸透しつつあるという手応えを感じております。
 文化庁の京都への全面移転が政府方針として決定したことも、大きな一歩であったと思います。これまで「総論賛成・各論反対」のまま棚ざらしにされていた東京一極集中の是正が、これから進展するきっかけになると期待しております。
 みなさまには、この1年間、関経連の活動に、ご理解、ご協力を賜り、誠にありがとうございました。みなさまに支えていただいたおかげで、充実した1年にすることができたと思っております。
 一方、3月9日に大津地裁より高浜原子力発電所3・4号機の運転を差し止める仮処分命令が出され、プラントを停止せざるを得なかったのは非常に残念なことでありました。極めて不当な決定であり、関西電力として到底承服できるものではありませんが、予定しておりました電気料金の値下げができなくなり、大変申し訳なく思っております。
 関西電力では、すでに大津地裁に保全異議申立をしております。できるだけ早期に仮処分命令を取り消していただくよう、高浜3・4号機の安全性の主張・立証に全力を尽くしてまいりますので、ご理解、ご支援を賜りますようお願い申し上げます。

 次に、今年度の関経連の活動について申し上げます。今年度は、昨年度からの引き続きとなります「複眼型国土の形成」、「健康・医療イノベーション創出」、「広域観光戦略の推進」の3つに、「アジアでのビジネス機会創出」を加えた4つを重点事業といたします。
 昨年度までの成果を踏まえて、今年度も着実にステップアップしたいと思います。
 「複眼型国土の形成」につきましては、昨年度、国土形成計画や広域地方計画に、複眼型スーパー・メガリージョンの考え方を盛り込むことができましたので、関経連の主張が、政府の方針に位置づけられることになりました。
 今年度は、その実現に向けた活動を加速したいと思います。
 スーパー・メガリージョン構想の中核となるリニア中央新幹線につきましては、大阪までの延伸が計画通り名古屋までに18年遅れることとなった場合、関西企業は3兆円の利益を失うと試算しております。こうした悪夢のような事態を招かないために、引き続き、政府・与党などに対する粘り強い働きかけを進めてまいりたいと思います。
 高速道路のミッシング・リンクにつきましては、大阪湾岸道路西伸部の今年度の事業化が決定しております。残る淀川左岸線延伸部などにつきましても、引き続き、一日も早い開業を訴えてまいります。
 「健康・医療イノベーション創出」につきましては、昨年7月に産官学で組織する「関西健康・医療創生会議」を設立し、今年2月の財界セミナーでは、地域住民の協力も得て「健康・医療メガクラスター」を目指す方針を打ち出しました。
 国家戦略特区を活用した創薬や新しい治療法の確立、ビッグデータの活用、健康寿命を伸ばす街づくりなど、テーマは実に多岐にわたりますが、具体的な成果につなげるべく、そのひとつひとつに関西の力を結集してまいりたいと思います。
 また先日、政府が医療ビッグデータを患者の同意なしで集められるように法改正すると発表しましたが、こうした変化にもしっかり対応して、関西の健康・医療産業の発展を後押ししたいと思います。
 「広域観光戦略の推進」につきましては、昨年、関西を訪問した外国人観光客数を約790万人と推計しており、「2020年に800万人」の目標は前倒しで達成できる見込みとなりました。
 今年4月に販売開始しました「KANSAI ONE PASS」も、5月15日現在、すでに8,400枚を売り上げて、好評をいただいております。
 一方で、昨年まで急激に増加していたインバウンド関連消費の伸びが、このところ落ち着いてきた感があります。先月、中国政府が海外で購入した商品を国内に持ち込む際に課す関税を引き上げたことや最近の円高傾向の影響も、これから出てくる可能性があります。
 したがって、過去は過去として、足元を冷静に見つめて、目の前の課題をひとつひとつ克服していく地道な努力が、これからも必要であります。
 今年3月に設立いたしました関西国際観光推進本部では、新たな目標値の検討の他、広域観光周遊ルート「美の伝説」のプロモーション、国別マーケティング、Wi-Fi環境の整備、宿泊施設不足への対応などに取り組んでおります。
 関経連といたしましても、関西広域連合とともに、関西国際観光推進本部の活動をしっかり支えてまいりたいと思います。
 新たに重点事業に加えました「アジアでのビジネス機会創出」は、TPPの発効を見据えて、関西とアジアの関係をさらに強化するものであります。
 まず、「親・関西人材」、すなわち「関西とアジアの架け橋となる人材」の育成につきましては、2月の財界セミナーにおける議論を踏まえて、JICAやHIDA(ハイダ)、PREXなどと連携し、人材育成プログラムの充実や、関西留学経験者とのネットワークの構築、活用などを進めてまいります。
 また、6月を目途にアジア諸国の国別アクションプランを策定し、それに基づいて、様々な交流活動を展開したいと考えております。
 重点事業以外の、ものづくり産業拠点の形成、うめきたⅡ期開発、けいはんなの機能強化なども、しっかりと前に進めてまいります。みなさまには、引き続き、ご理解とご協力を賜りますよう、お願い申し上げます。

 関経連は、今年の10月に創立70周年の節目を迎えます。これまでの70年の道のりは、決して平坦なものばかりではなかったと思いますが、会員のみなさまとともに歩んできた軌跡は、関西経済の発展の歴史そのものであったと思います。
 当初は163であった会員数は、今では1,300にまで拡大いたしました。これは、関経連の果たす役割や、関経連に対する期待が年を追うごとに大きくなってきたことの表れであると思います。
 次の70年に向けた第一歩となる今年は、例年以上に実り多い年にしたいと事務局ともども意気込んでおります。みなさまとともに、関西のため、日本のために精一杯尽くしてまいりますので、今年も、関経連の活動に対してご理解、ご協力を賜りますようお願い申し上げまして、私からのご挨拶とさせていただきます。
以  上