会長コメント
第56回定時総会 松本会長挨拶
2018/05/28会長 松 本 正 義
本日はみなさまご多用のところ、ご出席を賜りましてありがとうございます。定時総会の開会にあたり、ご挨拶をさせていただきます。
昨年5月に森会長からバトンを引き継ぎ、これまでの取り組みを継続しつつ、万博誘致や、第3期中期計画と2018年度事業計画の策定など、皆さまのご協力を得ながら全力で進めてまいりました。あっという間の1年であったと感じております。
ここで関西の状況をみますと、生産、輸出が堅調であることにくわえ、インバウンド観光客の増加により、観光関連の産業は活況を呈しており、緩やかな景気の回復傾向が続いております。
一方で日本のGDPに占める関西のGRPの割合をみますと、70年万博の頃には約20%であったものが、2014年度には約16%となり、残念ながら関西の相対的な地位は低下してきているという厳しい現実がございます。
こうした中、関西の持つアセット、特色や強みを活かし、関西をいかに発展、復権させていくのか、ということが待ったなしの課題になっていると認識しております。
こうした問題意識のもと、本年度からの中期計画を皆さまと議論しながら策定し、今年1月に公表しました。この中期計画では、2つの基本的な視点を重視していきたいと考えております。
まず「ルック・ウエスト」につきましては、関西から見て東にある東京ではなく、西にあるアジアに目を向けるということ、そして、「東京一極集中を是正すべき」と訴えるのではなく、自分たちが自らの力で、関西がどのように発展していくのかを考え、実行していくことが大切である、というメッセージを込めております。
次に「グローバルな視点での、舞台としての関西」につきましては、万博やIRの誘致、そしてG20首脳会合やラグビーワールドカップ、ワールドマスターズゲームズの開催などを通じて、国内のみならず、アジアをはじめ世界から、関西に、人や企業が集まるようにする。関西の人が躍動するだけではなく、世界中の人々が、企業が、ここ関西を舞台として活発に活動をする。そのための舞台を整えていこう、という視点であります。
さらに、世界の潮流であるSDGsの達成に、関経連の事業を通じて貢献をしていく、と宣言していることも、今回の中期計画における特徴であります。
それでは、計画の内容や主な取り組みの状況などについて、ポイントを絞って、ご説明させて頂きます。
中期計画では、花壇に咲く花のイメージを用いておりますが、「事業の柱」を5枚の花びらで、「インフラ」を茎で、「ビジネス基盤」を花壇の土壌として表しています。
5つの花びらの最初は、「観光/文化」でありますが、本年度は、何としても、万博の誘致を実現しなければなりません。会員の皆さまにおかれましては、誘致活動への多大なご協力、誠にありがとうございます。おかげさまをもちまして、誘致賛同者数については、約122万人になりました。
今年の3月には、BIE調査団の来日がございました。国や大阪府・市、経済界が一体となり、万博を日本で開催する意義や我々の熱意・熱気を、BIE調査団にしっかりと伝えることができたものと考えております。
これから、11月のBIE総会に向け、誘致活動もラストスパートに入ってまいります。「企業の海外ネットワークを活かした海外誘致活動の強化」そして「全国的な機運の盛り上げ」のためにできることは何でもやるとの姿勢で取り組み、何としてでも、誘致を勝ち取ってまいりたいと思っています。引き続き、ご支援をお願い申し上げます。
そして、観光についてであります。昨年4月に設立されました関西観光本部では、今後取り組むべき柱についての「グランドデザイン」の策定に向けた検討を、外部有識者等の知恵も借りながら進めております。
現在、インバウンドの増加により関西の観光関連産業は活況を呈しているものの、訪問先が大阪・京都などに集中していることから、関西広域にインバウンドの流れを広げていくことが課題となっております。引き続き、関経連を含む関係者が足並みをそろえ、受け入れ態勢整備と観光関連産業の振興にしっかりと取り組んでまいります。
なお来年6月にG20の大阪開催が決まりましたが、経済界としましても、開催の成功に向けた協力・支援を行います。またいわゆるIR実施法案が国会で審議中でありますが、関経連といたしましても、関西へのIR誘致実現に協力してまいります。
次に2つ目の花びら、「グローバル/アジア」についてであります。アジアの活力を取り込むことが関西発展のカギであると捉え、アジアと関西の関係を、これまでのように関西からの一方向だけではなく、双方向にしていくことが重要である、と考えます。
そのために、これまでの活動をベースに、アジア各国と関西双方の経済発展に向けた「プラットフォームづくり」をしていきたいと考えております。具体的には、関経連とアジアの経済団体が定期的に集まって、アジア各国と関西との間でビジネスメイキングの加速に向けた戦略・戦術について議論することを想定しております。2019年春に第1回会合を開催することを目指して、準備を進めてまいります。
3つ目の花びらが、「産業イノベーション」であります。既に関西にはものづくりのしっかりとした基盤がありますし、将来大きく発展するポテンシャルを秘めている分野が複数あります。こうした点を踏まえ、中期計画では、「健康・医療」「航空機」「環境・エネルギー」「AI・IoT」の4分野を中心として、将来の関西を支える産業クラスター群形成のための環境づくりに注力してまいります。
「健康・医療」につきましては、引き続き関西健康・医療創生会議と連携し、データ利活用による新サービス創出、企業の健康経営などを目指してまいります。
「航空機」につきましては、関西地区におけるクラスターの現状を分析し、新規参入を支援いたします。すでに関西航空機産業プラットフォームが活動しておりますが、現在対象となっている機体・エンジンなどの分野だけでなく、装備品や保守、新技術開発などにも対象を拡大し、広域的な振興策の充実のために新たな体制づくりを進めます。
「環境・エネルギー」につきましては、関西には、もともと水素関連技術に強みを持つ企業が集積していることから、今後、水素社会の実現に向けた取り組みを進め、この基盤を強化してまいります。
「AI・IoT」につきましては、これらの活用を通じた生産性向上、新製品・サービス開発を支援するため、活用事例を収集し、広く情報提供するとともに、関西生産性本部とも連携しながら、幅広い企業での活用に向けた取り組みを進めてまいります。さらに、夢洲やうめきた2期のスマートシティ化など、街づくりでの活用も進めてまいります。
これらについては、国家戦略特区や総合特区制度なども活用しながら、取り組んでまいりたいと思います。
そして、イノベーション創出を支える拠点づくりとして、「けいはんな」における取り組みをさらに進めると共に、うめきた2期におけるベンチャー・エコシステムの形成などに関与してまいります。さらに大学とのさらなる連携強化も重要なポイントであると認識しております。
次に、4つ目の花びら、「スポーツ」についてであります。関経連では、昨年5月にスポーツ振興委員会を設置して検討を進めてまいりました。
スポーツを通じて一人一人が健やかになることはもちろん、地域、経済も元気になるという文化を関西に根付かせるため、「トップアスリートの育成」、「生涯スポーツの振興」、「スポーツ産業の振興」、「スポーツイベントの招致」を4本柱として取り組んでまいります。
今年度は、「関西スポーツ振興ビジョン」を早急に取りまとめたうえで、関西観光本部などさまざまな関係先と協力、分担しながら、今述べた4本柱を推進するための体制を構築するとともに、具体的な取り組み策を打ち出していきたいと思います。
5つ目の花びらは、「地方創生」であります。ご承知のように、関経連では長年、地方分権・道州制に取り組んできておりますが、現状では、残念ながら、この分野の議論は停滞しているといわざるを得ません。
そのような中で、関経連としては、この旗をあくまで降ろさずに進めてまいります。具体的には、改めて関経連としての地方分権・道州制に関する考え方を、近く提言としてまとめ、発信するとともに、全国唯一の広域行政機構である「関西広域連合」との連携をさらに強化してまいります。
次に、中期計画のイメージ図では、花を支える「茎」の部分にあたる「インフラ」の整備・活用についてであります。関西は、首都圏、中部圏と比べますと、道路、鉄道の整備において、まだまだ遅れをとっております。
高速道路につきましては、今年3月、新名神高速道路の神戸~高槻間が全線開通するとともに、2016年度以来、大阪湾岸道路西伸部、淀川左岸線延伸部、大和北道路の事業化が決定するなど、着実な進展が見られました。これらに加え、淀川左岸線2期、大和川線、神戸西バイパスなども含め、今後も引き続き、重要路線整備のための財源確保や、名神湾岸連絡線の新規事業化など、ミッシングリンクの早期解消を訴えてまいります。
リニア中央新幹線・北陸新幹線につきましては、これからが正念場です。関係自治体などとも協力しながら、地元の機運をさらに高め、早期整備を目指してまいります。また、関空のアクセス改善につながる、なにわ筋線の早期整備についても、しっかり後押しをしてまいります。
空港につきましては、今年4月から3空港の一体運営が始まりました。関西全体の航空需要の拡大と経済活性化のため、3つの空港というアセットを最大限に活用できるよう、3空港懇談会を介して、関係者と検討を進めてまいります。
そして、中期計画のイメージ図の花壇の部分にあたるビジネス基盤分野では、昨年度以来、財政健全化、コーポレートガバナンス、独占禁止法に関して、関経連の独自性を強く打ち出した提言を行っています。
財政健全化につきましては、経済成長との両立を図るため、税制と財政、両面からの改革が必要であると主張しています。具体的に、税制面では、消費税10%への確実な引き上げにくわえ、法人実効税率の一律の引き下げ論にピリオドを打ったうえで経済活力を引き出す法人税制への見直しなどを訴えるとともに、財政改革については、社会保障制度の見直しに焦点をあてた提言を行いました。
コーポレートガバナンスにつきましては、SDGsの底流にある「中長期的視点」「持続可能性」「課題解決を通じた社会貢献、公益性」といった考え方を踏まえつつ、中長期的な企業価値向上を図る環境を整えるため、投資家や企業の短期的利益の追求や形式的な対応を助長する四半期開示制度の義務付け廃止などを含む提言を行いました。
独占禁止法につきましても、企業の防御権をはじめとする適正手続きの確保などが必要との意見を表明しました。
本年度はこうした活動をさらに発展させるとともに、「環境・エネルギー」そして「雇用労働」の領域においても、関西ならではの視点に基づく、思い切った政策提言・要望活動を行い、共感の輪を広げてまいりたいと思います。
これからも、夢と希望にあふれた活力のある「大関西」の創造をめざし、精魂を込めて取り組んでまいる所存でございます。会員の皆さまにおかれましては、引き続き、関経連の活動にご支援を賜りますようお願い申し上げまして、開会の挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。
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