会長コメント
2025年春季労使交渉にあたってのお願い
2025.01.16公益社団法人関西経済連合会
会長 松 本 正 義
会長 松 本 正 義
2025年春季労使交渉に向けて、当会では、わが国の賃金水準や足もとの物価動向などの状況を踏まえ、賃上げに対する「基本的な考え方」を取りまとめました。それぞれの労働条件は各社の業績等を考慮し個別の労使間で協議・決定される事項であるとの原則のもと、各社での検討の際には是非、以下の点を考慮いただき、ご対応賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
2023 年を転換点とした賃上げの大きな流れは、長引く物価高騰への対応を背景に一段と高まり、2024年の春季労使交渉では前年を上回る高水準の賃上げとなりました。実質賃金も上向きつつあるものの、物価上昇が継続するなかで、依然としてプラス基調が定着したとは言い難い状況にあり、2025年は、これまでの力強い賃上げの流れを定着させ、賃金と物価が適度に上昇するサイクルを確実なものとできるのかが問われる年になると思われます。
このような認識のもと、2025年の春季労使交渉に向けて、物価上昇が続く現状を鑑み、これに負けない積極的な賃上げの継続を企業の社会的責務としての強い決意をもって呼びかけたいと思います。多様な方法・手段の中から賃上げの方策をご検討いただく際、制度昇給に加えて、働き手が生活水準の維持・向上を実感できるようなベースアップの実施が有力な選択肢となると考えます。
さらに、「賃金と物価の好循環」の実現に向けては、様々な費用の増加分を価格に適正に反映させることが求められ、労務費を含む価格転嫁をサプライチェーン全体に定着させることがより一層、重要となります。働き手の7割近くを雇用する中小企業に賃上げの流れを広く波及させるためにも、発注者としての企業の果たすべき役割が大きく、政府の「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を踏まえ、労務費・人件費の増加分を積極的に価格転嫁できるよう会員各社のさらなるご理解・ご協力をお願いします。
当会では、かねてよりマルチステークホルダー資本主義に基づく経営の重要性を主張してまいりました。人への投資・設備投資による生産性の改善・向上や適正な価格転嫁等による収益の拡大を原資に賃上げを行い、個人消費が喚起・拡大され、適度の物価上昇が続き、収益がさらに拡大する。こうした安定的なサイクルを生み出すことで「成長と分配の好循環」の実現を図り、中核的な働き手である「中間層の活力向上」につなげていくことが、企業に求められる方向性だと考えます。
以 上