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Kansai D&I News
2023.4.26 企業の取り組み最前線

男性育休による幸せの基盤づくり
積水ハウス株式会社

積水ハウス 執行役員 山田実和

積水ハウス 執行役員
ESG経営推進本部 ダイバーシティ推進部長

山田実和氏

ESG経営推進本部ダイバーシティ推進部 木原淳子

ESG経営推進本部ダイバーシティ推進部
木原淳子氏

“「わが家」を世界一幸せな場所にする”という積水ハウスのグローバルビジョンを実現するためには、従業員一人ひとりが幸せになることが重要だ。この考えのもと、2018年9月に男性の育休取得促進の取り組みをスタートした積水ハウス。3歳未満の子を持つ男性従業員による1カ月以上の育休取得率は100%に達し、様々な効果が見えてきた。ダイバーシティ推進部の山田実和さん、木原淳子さんに取り組みの成果を聞いた。

男性育休が当たり前になると、会社は強くなる

――男性の育休取得促進の取り組みをスタートして4年以上が経過しました。取り組みの成果をどのように捉えていますか。

積水ハウスグループ「特別育児休業制度」取得者アンケート

木原2023年2月末現在、取得期限を迎えた対象者1608名全員が1ヶ月以上の育休を取得し、取得率100%を達成しています。当社では、男性育休がただの休暇にならないよう、「家族ミーティングシート」をもとに育児休業取得時期や休業中の家事・育児の役割分担について家族で話し合い、それを踏まえて取得に向け計画を立てるという流れをとっています。取得した男性従業員からは「家事・育児がこまごまとたくさんあることが分かり、わが家の家事分担やありたい姿を見直すきっかけになった」という声が聞かれました。パートナーからは「夫が育児に参加してくれるだけでなく、大変さを知ってくれたことが嬉しかった」という声もあり、従業員とその家族の幸福度アップにつながっています。

山田当初は従業員と家族の幸せのためにスタートしたのですが、1カ月休むことで、仕事の見直し、属人化の解消、業務の断捨離が行われ、コミュニケーションの活性化や助け合いの風土醸成、有給休暇を申請しやすい雰囲気が生まれるといった効果も出ています。男性育休の取り組みが学生に評価され、新卒人材の確保にも好影響を及ぼしています。

――具体的な成果や効果としてはどのようなものがありますか。

山田住宅提案のプロとして、実際に家事・育児を経験したことで共感力や提案力が向上したと感じる人が多く、お客さまへの価値提供につながっています。お客さまから、育休を取って家族を大事にする人に自分の家を任せたいと言われ、モチベーションがアップしたという人もいます。

木原組織面でも、誰でも当たり前に育休が取れるよう、仕事の仕方に対するイノベーションが起きています。例えば営業担当が男性育休を取得する場合、1カ月休んでもお客さまに迷惑をかけないように、チームで対応する体制をとります。そのために、育児休業に入る1カ月前までに取得計画書を作り、誰にどの仕事をしてもらうのかを細かく書いて、引き継ぎます。育休中は、チームリーダーである上長が仕事を引き継いだ人と定期的に面談をして状況を確認、引き継いだ人を適切に評価することをマネジメント層の役割としました。こうした仕組みがマネジメント力の強化につながり、強い組織づくりを推進するエンジンになっているのです。

――取り組みの課題や反省点などがあれば教えてください。

山田当初、1カ月の育休取得を目標に掲げていたので、1カ月以上取る人は非常に少なかった。また、1カ月まとめて取るよりも、分割して取るケースが多いのが現状です。男性育休取得後に取得者とその家族に対するアンケートでは、もう少し長くまとめて取りたいという声が多く、今後は3カ月、6カ月と長く取得できるような体制が必要になってくると考えています。本人と家族が必要な期間、取れるようにするのが課題ですね。取得者の声を反映することで、より男性育休を取得しやすくする制度を更新・拡充しています。

――他の企業では、男性の育児休業取得について「上司の理解が得られない」「代替要員がいない」などの理由から取得が進んでいないという声も聞いています。積水ハウスでは、これらに対してどのように対応されているのでしょうか。

木原当社も「ただでさえ忙しいのに休まれては困る」とか、「家のことは妻に任せておけばいい」という性別役割分担意識からくる意見もありました。そんな声に対し、男性育休は組織力を高めるために実施するものと粘り強く説得してきました。育児休業は数カ月前からある程度予定が決まっているもの。にも関わらず1カ月の休みも取れないとなるとマネジメントに問題があると言わざる得ません。今後、病気やケガ、家族の介護で急に休むこともあるでしょう。誰が休んでも業務遂行できる強い組織を作っておく必要があります。

山田運用開始にあたって、全国の男性育休対象者とその上司が参加するフォーラムを開催し、仲井嘉浩社長自らメッセージを発信しました。グローバルビジョン実現のために、まずは社員に幸せになってほしいということ、そのために男性育休の取得促進に取り組むという、社長の本気度を伝えたのです。上司の理解を得るためには、上司と対象者のペアでフォーラムや研修を実施するのがポイントですね。
 マネジメント層の評価項目にダイバーシティの推進があり、男性育休の取得、チームでの助け合いやフォロー体制づくりも評価項目に入っています。制度が根付くまでは、事業所の業績表彰できちんと育休を取らせているか、取得計画書を1カ月以上前に出しているかなどを評価のポイントにして、会社全体の方向性をアピールしました。

――積水ハウスでは男性育休以外にもD&Iに関して様々な施策を展開していますが、今後、特に取り組んでいきたいことを教えてください。

山田グローバルビジョンの達成のためのサブビジョンの一つとして、ESG経営のリーディングカンパニーになることを謳っています。従業員が幸せになるために、これからはさらに一人ひとりの自律が必要です。自律を支援するための4つの施策として、キャリア自律の支援、DE&Iの推進、多様な働き方の推進、幸せの基盤づくりがあります。男性育休は幸せの基盤づくりの一環としてスタートしました。今後は、健康経営や、育児だけでなく、介護、看病、治療などを対象に制度を拡充し、従業員が安心して仕事ができる体制づくりを進めるとともに、ライフも含めた一人ひとりのキャリアビジョンの実現に向けて自律を高めていく施策や支援を進めていきたいと考えています。

育休取得者の声

育児経験が業務に役立つ

育休取得によりお客様へ提案する際の視点が変わったように思います。例えば、子どもがお風呂から上がって髪を乾かす場所は、洗面所ではなく、リビング。お風呂とリビングの動線をどう確保すべきか、寒さから守るにはどうしたらよいか等、自身の経験をもとに具体的にイメージし、提案できるようになりました。
(積水ハウス 営業マネージャー)

引き継ぎが業務の効率化に

育休取得にあたり、まずは自身の業務を営業所内で共有できるよう、リスト化を行いました。引き継ぎメンバーにかかる負担を可能な限り低減したいと意識しリスト化することで、業務の効率化と優先順位の明確化につながりました。
(積水ハウス不動産中国四国 賃貸営業)