毎年、6月は世界各地で「プライド月間(Pride Month)」とされ、LGBTQの権利について啓発を促すさまざまなイベントや活動が行われる。今回は、プライド月間を迎えるにあたり、企業のLGBTQへの取り組みついて紹介する。
LGBTQを含めた多様な人材活躍のための施策が進んでいる。LGBTQはレズビアン(女性同性愛者)、ゲイ(男性同性愛者)、バイセクシュアル(両性愛者)、トランスジェンダー(体と心の性が一致しない人)、クィア/クエスチョニング (異性愛者およびLGBTQの4つ以外のさまざまな性的指向・性自認の総称的な意味/性自認と性的指向が決まっていない、決めていない人)の頭文字を取った略称。日本では、調査機関等によってデータにバラつきがあるが、10%前後が当事者と言われている。
LGBTQの取り組み評価指標「PRIDE指標」5年連続最高評価ゴールドを受賞する川崎重工業では、ハンドブック配布やセミナー、教育活動の実施に加え、社内で法律上の配偶者と同等にみなす「同性パートナー登録規程」を2020年に定めた。「同性パートナー登録規程」では、慶弔休暇や介護休暇取得などに加え、パートナーと一緒に社宅に入居できる。
取り組みのきっかけは、2019年当時の社長、金花芳則氏の海外勤務での体験だ。「アメリカ駐在時、職場でのカミングアウトをきっかけにパフォーマンスが大きく向上した社員がいた。本来の自分ではない姿でいたことがプレッシャーになり、力を発揮できていなかったのではないか。個性を生かして活躍できる企業風土づくりが競争力向上につながると考え、トップ主導で施策を推進してきた」とダイバーシティ推進担当の秦さんは話す。
「同性パートナー登録規程の利用実績はまだないが、同性婚が認められていないなか、制度の利用有無に関わらず、会社として制度を定めておくことが、LBGTQに対する会社の姿勢を示すことになり、社内(職場)でのダイバーシティ&インクルージョンの風土醸成につながる。当事者の方にもより働きやすさを感じてもらえる会社にしたい。」と秦さん。
川崎重工業では、LGBTQの当事者を正しく理解する支援者である「ALLY(アライ)」を増やす活動にも力を入れている。現在、属性に関わらず1,000人のALLYがいる。「LGBTQへの取り組みは、当事者でない人にとっては他人事になりがち。いかに巻き込んでいくかが難しいところだが、新入社員や管理職等、階層別研修の機会を活用し、理解促進に努め、ALLYを増やしていきたい」
ALLYの輪をさらに広げていくにあたり、生産現場で働く従業員への理解促進にはまだまだ多くの伸びしろがある。「生産現場で働く従業員向けに理解促進を目的とした教育機会をさらに設けていきたい。また、理解促進施策と並行してハード面の整備も関係部門と協力しつつ、できるところから順次進めている。例えば、工場の新設や改修のタイミングに合わせて、誰でも使用できるトイレを増設するなど、誰もが働きやすい職場環境の実現を目指している。」
制度設計の根底にあるのは、全ての従業員が尊重され、活躍できる企業風土の醸成だ。激化する国際競争を勝ち抜くため、世界中で活躍する約38,000名の従業員一人ひとりが持つ多様な能力を存分に発揮する組織づくりへ川崎重工業の取り組みは進む。
秦 凜太郎
川崎重工業株式会社 人事本部人事企画部
ダイバーシティ推進課