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Kansai D&I News
2023.11.9 企業の取り組み最前線

多様な個性を受け入れることでイノベーションが生まれる
株式会社パソナグループ

パソナ 常務執行役員 関西営業本部長 實松 恭子 氏

パソナ 常務執行役員 関西営業本部長
實松 恭子 氏

パソナグループ 淡路HR部 淡路研修チーム チーム長 三重野 楓 氏

パソナグループ 淡路HR部 淡路研修チーム チーム長
三重野 楓 氏

全社員のうち女性が6割以上、女性管理職が5割以上を占めるパソナグループ。創業当時から女性活躍に取り組み、女性リーダーやグローバル人材の育成を通して多様な人材が活躍できる環境を整えてきた。常務執行役員として営業部門を率いる實松恭子さんと、グループの人財開発に携わる三重野楓さんに、パソナグループのD&Iの取り組みを聞いた。

――パソナのD&Iの取り組みを教えてください。

實松パソナは1976年に人材派遣サービスの会社として創業。理念に「社会の問題点を解決する」を掲げ、誰もが自由に働ける社会を目指して女性の社会復帰という課題に先駆けてチャレンジしてきました。ここ数年で注目されるようになった女性活躍やD&Iに、創業時から取り組んできた歴史があります。

 最近の取り組みの一つが、2014年から始まった女性リーダーを育成する「ワンダーウーマン研修」です。グループ内から15~20名を選抜し、半年から1年かけて行っています。役員からパソナの企業理念や考え方を、社外の講師から立居振舞や話し方などを学ぶほか、D&Iを進める他社の経営者に取材し、発表するというプログラムを実施しています。私も2期生として研修を受け、その後、執行役員に昇格しました。

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 もう一つは、グローバル人材を育成する「Awaji Youth Federation(淡路ユース・フェデレーション)」です。2011年から始まった地方創生事業の一環として、本社を淡路島に移し、多様な働き方を推進する取り組みをスタートしました。国内外の優秀な起業志望者を20名程度受け入れ、1年間集団生活をしながらビジネスを企画しプレゼンするもので、今年で5回目となります。

三重野「Awaji Youth Federation」は、さまざまなロールモデルを作っていく一つのチャレンジの場。日本で起業したい外国人や日本で学び自国へ戻って起業したい外国人の受け入れを行っています。

 淡路島西海岸の飲食・宿泊各事業にも様々なバックグラウンドを持つ人材が増えています。その中で、一番力を入れているのが入社研修の際に創業の理念や思い、事業に対する考え方を伝えることです。また、外国人を受け入れるため、宗教、食事など異文化理解を深める社員研修も実施しています。受け入れる側の環境づくりや教育も大切だと考えています。

――そうした取り組みはどういった成果に表れていますか?

實松多様な個性を受け入れる体制が整っていることでイノベーションが生まれることですね。誰かと同じ意見を言うよりも新しい意見を言うことをよしとする社風もあり、10人いれば10の意見が出る。そのなかから斬新な意見が出て、イノベーションが起こり、それが新たな事業につながっています。農業をしながら芸術活動を行う半農半芸プロジェクトなどは社員から出た提案で、多様なバックグラウンドを持つ人材がいるからこそ出てきた発想だと思います。

――D&Iを進めるには何が必要だと考えていますか?

實松社内に身近なロールモデルが存在することでしょうね。今の私があるものたくさんのロールモデルに恵まれていたからです。ロールモデルがいると自然にキャリアビジョンの中で管理職の選択肢ができます。

 それに加えて、社内の意識改革も大切です。どんなに人事部の意識が高くてもD&Iが進まない理由のひとつは『経営戦略』です。誰が旗を振るのか?後押ししていく体制は十分か?その本気度ではないでしょうか。まずは『共に働く仲間を愛し思いやる互助の精神』がベースにあり、価値観の違いを理解し尊重しあうことこそ、D&I推進の一歩と考えます。

三重野若い人ほどD&Iへの感度は高く、制度やロールモデルとなる先輩社員を参考に『自分が活躍できる環境はあるのか?』という視点で企業を見ています。

 ロールモデルを輩出するには、多様なバックグラウンドを持つ人材を登用した後のフォローが重要です。その人が抱える働きづらさや課題に寄り添い続け、最大限力を発揮できるよう変わりゆく社会環境に合わせ制度変更も含めた施策を打ち続ける必要があります。それがパソナグループの根本となる考え方である「人を活かす」の実践だと考えています。

――営利企業である以上、売上は必要ですが、D&Iとのバランスはどう取っていますか?

實松売上を上げることと、社員に対するホスピタリティ、すなわち働きやすい環境をつくるための思いやりの両立は難しい問題です。新卒採用の面談でどちらが大事かと聞かれたら、両方大事だと回答しています。

 売上をあげることも大切ですが、『社会に貢献していこう』という社員一人一人の意識・行動が『思いやり』の精神につながります。

 この両輪があってこそです。結局、目先の利益ではなく、長い目でみたときに利益になるかという中長期的な視点、『ベストセラーよりロングセラー』として長く会社から必要とされる視点を持つことが大事だと感じています。

三重野社内で多様な人材が活躍することは後進の育成にも効果が出ていると感じます。勿論マネジメントの大変さはあると思いますが、多様な個性に向き合っているからこそ、新しい事業に果敢に飛び込む人が増えたり、売上が伸び悩んでも別の部署でチャレンジし、新しい成果や価値を生み出す人が出てくることがある。また、育児・介護等様々なライフステージの中でも活躍する社員が多くいることは、若手社員が長期的に就業していくためのモチベーションにも繋がります。

――今後、取り組んでいきたいことは?

實松引き続き、あらゆる人が活躍できる社会を目指して、多様な働き方の推進に力を入れていきたいと思います。これから日本が目を向けなければいけないのはグローバルな市場であり、世界から人材を受け入れるにしても世界に出ていくにしても避けて通れない課題です。グループ全員が視野をグローバルに広げ、スピード感をもって取り組んでいけるよう、人材育成に取り組んでいきたいと思います。