関西経済連合会は、会員企業におけるD&Iの状況を毎年確認し、D&I推進の現状や各種データの伸び率などを提示して取り組みの参考としていただくため、標記調査を実施した。本年度は7月末から9月にかけて会員企業約1,120社を対象に行い、うち225社から回答を得た。
1.女性の活躍推進の状況
当会は2021年11月に「関西D&Iビジョン」を策定し、基本理念として「多様な人材の活躍の場をひろげる」、「多様な価値観を企業の成長に取り込む」の2つと、アクションを4つ掲げている(図左側)。そして、女性の活躍推進を取り組みのファーストステップに位置づけ、アクションごとの目指すべき企業の姿を、女性採用比率や女性管理職比率、男性育休取得率といった数値や、従業員意識実態調査の実施、専門部署等の設置といった定性目標とともに定めている(図右側)。今回は本調査結果を、「関西D&Iビジョン」で示したこれらの項目に沿ってまとめる。
(※)関経連D&Iビジョンに関する詳細はこちら
直近3年間の女性採用比率
「直近3年間の女性採用比率」は、回答企業平均35.3%(前年度調査比+1.7pt)。
特に、非製造業は従業員規模300人以下の企業と3,000人超の企業で40%を上回った。
女性管理職比率
「女性管理職比率」は、回答企業平均9.0%(前年度調査比+0.2pt)となり、緩やかな上昇が続いている。特に、非製造業の従業員規模3,000人超企業は15.0%と最も比率が高く、上昇が続いている。
【参考:令和4年度雇用均等基本調査結果(女性管理職比率)】
令和4年度雇用均等基本調査では、課長相当職以上の、管理職に占める女性の割合は12.7%と、前回調査(令和3年度12.3%)より0.4ポイント上昇、係長相当職以上の、管理職等に占める女性の割合は14.7%と、前回調査(同14.5%)より0.2ポイント上昇した。
それぞれの役職に占める女性の割合は、役員では21.1%(同21.4%)、部長相当職では8.0%(同7.8%)、課長相当職では11.6%(同10.7%)、係長相当職では18.7%(同18.8%)となっている。
規模別にみると、いずれの管理職等の割合においても10~29人規模が最も高く、部長相当職が14.7%、課長相当職が18.2%、係長相当職が26.6%となっている。
課長相当職以上の管理職に占める女性の割合を産業別にみると、医療,福祉(53.0%)が突出して高くなっており、生活関連サービス業,娯楽業(24.6%)、宿泊業,飲食サービス業(17.5%)、教育,学習支援業(17.2%)と続いている。
当会のD&Iに関するアンケート調査結果と令和4年度雇用均等基本調査結果とを比較する。全回答平均をみると、当会調査は9.0%と全国平均12.7%を下回っている(▲3.7pt)。また、従業員規模別の状況をみると、全国平均、当会調査結果ともに300~999人を底にU字を描く、同様の傾向がみられる。一方、従業員数300人以上の企業については、全国平均より当会調査結果の方が、女性管理職比率が高く、特に5,000人以上の企業は11.9%と全国平均8.2%を上回っている(+3.7pt)。
男性の育児休業取得率
「男性の育児休業取得率※1」は、回答企業平均32.6%(前年度調査比+8.7pt)となった。従業員規模3,000人超の企業では、製造業、非製造業ともに取得率が50%を超え、大幅に上昇している。
【参考:令和4年度雇用均等基本調査結果(育休取得率※2)】
女性:80.2%
前回調査(令和3年度85.1%)より4.9ポイント低下
男性:17.13%
前回調査(令和3年度13.97%)より3.16ポイント上昇
男性の育児休業取得者数は平成24年度1.89%以降、年々上昇している
※1…令和3年4月1日~令和4年3月31日に配偶者が出産した男性社員のうち育児休業を取得した割合。
※2…令和2年10月1日から令和3年9月30日までの1年間に在職中に出産した女性(男性の場合は配偶者が出産した男性)のうち、令和4年10月1日までに育児休業を開始した者(育児休業の申出をしている者を含む。)の割合。
※令和4年度雇用均等基本調査結果の詳細は以下をご覧ください。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/71-r04/07.pdf男性育休取得率について、令和4年度雇用均等基本調査結果とD&Iに関するアンケート調査結果とを比較すると、当会調査結果が全国平均の17.13%を大きく上回った(+15.47pt)。
従業員意識実態調査の実施率
「従業員意識実態調査の実施率」は、回答企業平均56.9%(前年度調査比+4.2pt)。
従業員規模3,000人超の企業では製造業、非製造業いずれも9割以上が実施している一方、300人以下企業では実施率が2割程度にとどまっており、実施率に従業員規模による差がみられる。
専門部署等の設置状況
D&I推進の「専門部署等の設置」は、回答企業平均43.6%(前年度調査比+1.2pt)となり、着実な上昇がみられる。
従業員規模3,000人超の企業では製造業、非製造業いずれも8割以上が設置している一方、300人以下企業では実施率が前年度調査より上昇したものの、低い値が続く。
2.外国人材の活躍推進
昨年2月、関経連を事務局とする「関西高度外国人材活躍地域コンソーシアム」が設置され、外国人留学生の関西での活躍を支援するための取り組みがスタートした。本調査でも、外国人従業員の採用に関する設問について調査した。
外国人従業員の採用計画、採用する計画がない主な理由
外国人従業員の採用計画について尋ねたところ、「以前より必要に応じ随時採用をおこなっている」が42.1%で最多。「以前より採用はおこなっておらず、今後も採用の計画はない(29.2%)」が続く。
外国人従業員を採用する計画がない主な理由について尋ねたところ、「コミュニケーションに懸念がある」が36.8%で最多。「外国人を採用する職種・業種がない(27.9%)」が続く。
採用計画に対する実績、計画通りに採用できなかった主な理由
外国人従業員の採用計画に対する実績について尋ねたところ、「ほぼ計画通りに採用できた」が74.3%。しかし、全回答の約25%の企業が計画通りに採用できなかった、と回答していた。
計画通りに採用できなかった理由について尋ねたところ、「国内企業との競争力に劣る(知名度面)」が57.9%で最多。「求める日本語コミュニケーション能力を有する人材が少ない(42.1%)」が続く。
今回調査で明らかになった課題もふまえ、今後当会D&I専門委員会において、さらなるD&I推進に向けた取り組みを進める。加えて、希望する個社へのアンケート結果のフィードバックを行い、同規模同業種の企業の状況と比較した状況を提示し、各社における今後の取り組みの参考としてもらう予定である。
※2023年度「D&Iに関するアンケート調査」の結果の詳細は下記サイトをご確認ください。
https://www.kankeiren.or.jp/material/231208houkokusho.pdf