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Kansai D&I News
2024.4.26 企業の取り組み最前線

「ちがいは、ちから。」多様性こそ組織成長の原動力。
――関西電力株式会社

関西電力 人財・安全推進室長坂田 道哉氏

関西電力 人財・安全推進室長
坂田 道哉 氏

 2011年にダイバーシティ推進グループを設置し、女性活躍推進や仕事と介護の両立支援、LGBTQの理解啓発活動等を行う関西電力。取り組みの現在地、成果や今後の抱負について、人財・安全推進室長の坂田道哉さんに話を聞いた。

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――関西電力がD&Iに取り組んだ背景についてお聞かせください。

 社会やお客さまのニーズが多様化するなかで、2011年にダイバーシティ推進グループを設置したことが始まりです。電力自由化の流れがあり、電力会社は電気を売ることに加えて、新たなサービスやビジネスでお客さまから選ばれる存在にならなくてはいけない。そのためには、多様な人財が、働きやすく、持てる能力を最大限に発揮し、活躍できる環境を整備することが必要です。

 ダイバーシティ啓発・意識変革や女性のキャリア意識の醸成・支援、女性従業員の活躍推進に向けた職場風土の醸成等から始まり、2015年にダイバーシティ推進方針を策定し取り組みを加速。同時にフレックスタイム制やテレワークなど働き方の柔軟性を高める制度と育児・介護との両立を支援する制度の充実を図りました。2020年以降、キャリア採用の拡大やLGBTQ理解啓発等に着手し、多様性を組織の力とすべく取り組みを進めています。

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資料提供:関西電力株式会社

――女性活躍に向けた具体的な取り組み内容を教えてください。

 当社では、2030年度末までに女性役職者比率および女性管理職比率を2018年度の3倍以上、採用に関しては事務系採用の女性比率40%以上、技術系採用の女性比率10%以上を目標として掲げています。役職者や管理職は一足飛びに増えるものではなく、長く勤務し活躍できる組織づくりが不可欠です。

 女性活躍に向けた取り組みとしては、キャリアステージに応じた研修や女性部下を持つ上司向けの部下育成力向上研修などを継続して実施しています。加えて、2023年度から女性経営幹部育成のためのメンター制度を導入しました。役員がメンター(指導者・助言者)となり、課長級の女性従業員に対して、キャリアに関する意識改革や能力伸張を目的に、一定期間、対話や直接的なサポートを行うものです。参加した女性従業員からは、自分が何をしたいのか改めて考える機会になり、経営幹部のサポートを通じてより高い視座を持つことができたという感想を貰っています。また、役員からは、仕事と育児の両立に関する悩みなど、新たな気づきがあったという感想を聞きました。当社の役員は50代男性が多く、どちらかというと家庭への貢献度は低い。仕事と家庭の両立に対するリアルな苦労や課題を聞くことが役員自身の新たな気づきにつながっています。

 メンター制度は始まったばかりです。双方の意見を聞きながらより有意義なものになるようブラッシュアップしていく方針です。

――これまでの取り組みの成果をどうとらえていますか。

 一言でいうと、「随分進んできたけれど、まだ道半ば」です。もともと結婚して育児期に入ったときに退職を選ぶ女性が多くいました、フレックスタイム制、テレワークなど両立を支援する制度を充実させ、出産や育児を理由に退職を選ぶ社員はほとんどいなくなりました。勤め続けられる環境づくりという意味では一定の成果が出ているととらえています。一方で、女性が自分自身の能力とリーダーシップを最大限に発揮し、活躍できる環境づくりはまだ道半ばです。キャリア支援策やメンター制度といった本人に対する研修に加え、上司や同僚の周囲理解など両面で取り組む必要があります。成果は一朝一夕に出るものではなく、やり続けることが、多様な人財が活躍できる環境づくりにつながり、当社の競争力強化につながると考えています。

――社員数の多いマンモス企業では、全社的にD&Iに取り組んでも部署ごとに温度差がありなかなか浸透しないという課題も聞きます。関西電力ではどのように解決してきたのでしょうか。

 2011年から取り組みを始め、はや13年になります。制度や仕組みを作り、動かしていくなかで徐々に風土が変わってきました。

 部署ごとに温度差があるというお話ですが、同じ方向を向いていても部署ごとに現状や課題が違うので、全社一律の施策で動かすことに限界があるということではないでしょうか。当社でも、第一線の職場と本店では抱える課題が異なります。したがって、現在は部門ごとにD&I推進担当を設け、課題の発見・解決に取り組んでもらうというやり方に変えようとしています。2023年度からは、部門ごとのD&I推進担当が一堂に集まり、事例を共有する場も設けています。当然、全社施策もありますので、両輪でD&Iを推進していくイメージですね。

――今後取り組んでいきたいことは?

 引き続き多様な人財が活躍できる組織づくりに力を入れていきます。今ターゲットとしているのが、キャリア採用者とベテラン層。

 当社では、2021年頃から人財の多様性を持たせるための施策として、キャリア採用を強化しており、比率が高まっています。キャリア採用者が組織になじみ、早く能力を発揮し続けられるよう継続的なサポートプログラムの策定に取り組んでいきます。

 ベテラン層については、段階的に65歳まで定年延長することが決まっており、活躍し続けてもらえるよう、キャリアの振り返りやリスキリング研修を行っていきます。