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Kansai D&I News
2024.6.17 企業の取り組み最前線

異なる個性を認め合い、新たな価値提供を実現する
――JR西日本

ダイバーシティ推進室 室長 中山あゆみ氏

ダイバーシティ推進室 室長
中山 あゆみ 氏

ダイバーシティ推進室 担当室長 青木聖子氏

ダイバーシティ推進室 担当室長
青木 聖子 氏

ダイバーシティ推進室内田航士氏

ダイバーシティ推進室
内田 航士 氏

 LGBTQ+の社員が働きやすい職場であることを評価する「PRIDE指標」において4年連続で最高評価の「ゴールド」を受賞したJR西日本。2023年度にはダイバーシティ推進室を立ち上げ、取り組みを加速させている。ダイバーシティ推進室の中山あゆみさん、青木聖子さん、内田航士さんに、LGBTQ+など性的マイノリティへの理解に向けた取り組みについて聞いた。

プライド・クルーズ大阪2024の様子

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https://pridecenter.jp/report_pco2024/

アライステッカー

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――LGBTQ+など性的マイノリティへの理解促進に取り組んだきっかけとこれまでの経緯をお教えください。

内田LGBTQ+に関する取り組みは、2000年代初頭から始めています。その当時は、性自認に応じた制服を着たいとか、泊まり勤務の際に性自認に応じた宿泊設備を利用したいという社員の相談に対し、社員本人の状況や希望を尊重し、対応を行ってきました。

 その後、2018年に制定した前中期経営計画で、「社員一人ひとりの成長こそがJR西日本グループの価値提供の大きな力になる」との方針を打ち出したことを契機に、多様な人財の活躍を促進する環境整備に着手しました。その一環として取り組んだのが、LGBTQ+など性的マイノリティへの理解促進と制度改正です。2019年4月には「JR西日本グループ人権方針」を策定し、性的指向や性自認等を理由とした差別やハラスメントの禁止、多様性を尊重するための教育・啓発について明文化し、具体的な取り組みを始めました。

 2023年4月に、グループの存在意義を表す「私たちの志」として、「人、まち、社会のつながりを進化させ、心を動かす。未来を動かす。」を策定しました。この志を実現するための原動力として、D&Iを位置づけ、取り組みを加速させています。2023年4月にダイバーシティ推進室を設置するとともに、同年9月にはトップメッセージを社内外に向けて発信し、「国籍、年齢、障がいの有無、性別や性指向、価値観、育児や介護、社内外での経験等を社員一人ひとりが有する大切な『個性』と捉え、互いに敬意・共感をもって認め合い、尊重する考え方を大切にする」ことを表明しました。

 現在は、社員それぞれの能力を最大限発揮できる環境をつくるべく、3つの取り組みを中心に実施しています。

 1つ目は「理解促進」です。性のあり方やLGBTQ+当事者が直面する課題について正しく理解するためのeラーニングを、役員含め全社員に実施するほか、上司や人事担当者を対象とした研修も行っています。実例も交えながら、人の性のあり方を出生時に割り当てられた性、性自認、性表現、性的指向の4軸から整理し、話を聞きながら「自分自身はどうだろうか」と考え、自分事に落とし込める内容にしています。加えて、ハラスメント研修の中で、SOGIハラ(性的指向および性自認についてのハラスメント)も取り上げており、LGBTQ+に該当しない方も含めて、誰もが被害者、加害者になる可能性があることを伝えています。知識を得ることが理解促進につながり、ハラスメント防止にも効果的であると感じています。

 2つ目は「制度整備」です。同性パートナーを対象とした社内制度の整備を行い、戸籍上の性が同一である同性パートナーも、自治体の証明書や宣誓書により結婚に相当する関係が認められる場合、結婚休暇や扶養手当、社宅等各種制度を利用できるようにしました。2023年11月に、配偶者の転勤などで転居が必要になった場合に異動や休職を希望できる制度を整備したのですが、同性パートナーや事実婚も対象にしています。今後も福利厚生制度の新設や改定の際には、同性パートナーへの適用を前提に進めていきます。

 3つ目は「相談窓口設置」です。LGBTQ+当事者が制度利用や性のあり方に関連した働く上での悩みについて相談できる窓口を社内外に設置しています。当事者だけでなく、社内外で特定の性のあり方に対する差別的言動に悩む方なども相談できます。特に社外相談窓口では、LGBTQ+当事者の相談員が対応を行っており、 LGBTQ+当事者はもちろん、社内のLGBTQ+当事者を取り巻く状況に悩む周囲の人々も安心して働ける環境を整備しています。

――取り組みを進めたことによって、社内・社外から反響がありましたか。

青木社内の反響は把握しにくいのですが、実際に制度を利用している人がいることを反響の一つととらえています。社外の反響の一つは、「PRIDE指標2023」において4年連続で最高評価の「ゴールド」を受賞したことです。LGBTQ+に関する制度整備を地道に進めてきたことが評価されたのではないかと受け止めています。

――今後に向けた課題があればお聞かせください。

青木現在実施している取り組みが本当に働きがいや活躍できる環境づくりにつながっているのか。制度利用者の声を聞く場を設け、フィードバックしていくことが必要です。当事者が困っていることや我慢していること、やってほしいことをきちんと把握して、制度や仕組み、マネジメントに反映し、当事者がより活躍できる環境を整備していきたいと考えています。

――D&Iを推進する意義をどのようにとらえていますか。

中山D&I推進により目指しているのは、異なる考え方や価値観、バックグラウンドを持つ仲間の存在を互いに理解尊重し、それぞれの力が最大限引き出される組織となること。これによって、変化に対応し、新たなアイデアや価値を創出できると考えます。

 2023年に発表した中期経営計画のなかで、鉄道事業を今以上に磨き上げていくこと、ホテルやショッピングセンター等のライフデザイン分野において新たな価値を提供することを掲げています。鉄道事業では今後労働力人口が減っていくなかで、今までとは違うやり方でより安全な鉄道を提供していく必要があります。同質性の高いメンバーで考えるよりも、価値観・経験・バックグラウンドが違うメンバーが集まったほうが新しいアイデアを生み出せると考えています。また、多様性はガバナンス強化や安全性の向上にも効果的だと感じています。異なる背景や経験を持つ社員が集まることで、多くの視点からリスクを発見することができ、安全で信頼される鉄道サービスを提供することにつながっていきます。

――今後特に取り組んでいきたいことを教えてください。

中山社内外への発信力を高めていきたいです。社内の制度や設備を整備してきましたが、そこに込めた一人ひとりを大切に考え、誰もが活躍できる環境にしていきたいという想いが社員にもっと伝わるようにしたいですし、ステークホルダーの皆様にも、D&Iを推進することによって、変化に対応し、価値を提供し続けることができると期待いただけるようにしていきたいと考えています。

青木JR西日本グループ全体にD&Iの取り組みを広げていくことです。当グループにはモビリティ業、不動産業、旅行・ソリューション業と様々な業態があります。多様なお客さまから選ばれるためには、意思決定時の多様な視点がますます重要になります。

 グループ全体のD&Iを推進することで、鉄道や各事業がともにシナジーを発揮し、「人、まち、社会のつながりを進化させ、心を動かす。未来を動かす。」という私たちの志をダイナミックに実現できると考えています。