津田物産グループ 取締役
吉本 俊彦 氏
津田物産グループ ライスフレンド株式会社 営業第三部 副主任
グエン・ティ・レ 氏
海外市場の開拓のために、高度外国人材を採用。その一環として、インターンシップを行い、以後も毎年実施している津田物産グループ。取締役の吉本俊彦さんに採用の経緯や成果を、同社で活躍するベトナム出身のグエン・ティ・レさんには留学生の就職活動について聞いた。
食品輸出に関する展示会で撮影した集合写真
(インターンシップ生4名が参加)
――高度外国人材採用のきっかけを教えてください。
吉本当社は米穀卸と販売を主業としていますが、日本の人口減少に伴い米の消費量は減少傾向にあります。このまま米の消費量が減り続けると、生産する農家さんの数も減ってしまいます。農家さんを守り、企業を成長軌道に乗せるためには、まず需要を増やす必要があります。そのためには海外市場に打って出るしかないと、2022年4月に海外市場の開拓を担う部門を立ち上げました。米を輸出するにあたっては、取引企業を開拓し、輸出申告などの制度面をクリアし、船積みの手配をするといった様々な業務が必要となるため、外国語を話せる人材が不可欠です。
しかし、人材獲得競争が激化するなか、外国語を話せる日本人を確保するのは容易ではありません。そこで、高度外国人材といわれる留学生を採用しようと考えました。
――具体的にはどのような採用活動を行ってきましたか。
吉本当社では初めての外国人材の採用。果たして今いるメンバーとうまくやっていけるのか、どうすれば活躍できる環境をつくれるのか、私自身も一緒に働く社内のメンバーにも不安がありました。そこで、まずはインターンシップを実施しようと考え、2021年9月に留学生向けインターンシップを開始しました。
コロナ禍でしたが、多くの応募があり、選考を通過した4人の留学生が参加しました。7日間のインターンシップでは、直営店舗での販売業務、海外企業をターゲットとした営業提案資料の作成などを経験してもらいました。終了後もアルバイトとして、海外向けの展示会に参加してもらいました。
このような取り組みを通じて、相互理解が進みました。結果として、2022年4月に香港出身の女性を1人、10月にベトナム出身のグエン・ティ・レさんを採用することができました。
――グエンさんにお聞きします。インターンシップの印象と津田物産グループへ入社を決めた理由を教えてください。
グエン貿易関係の仕事に就きたいという思いで就職活動を行うなか、津田物産グループを見つけ、農業を持続可能なものにしていくという会社の考え方に共感し、日本企業ならではの真面目な雰囲気やプロ意識を持って働く従業員のみなさんの姿勢に惹かれました。
インターンシップ参加時、私の日本語能力は日常的に使われる日本語をある程度理解できるレベルで、ビジネスでの会話はまだまだ。それでも津田物産グループのみなさんが親切丁寧に教えてくれ、とても嬉しかったことを覚えています。インターンシップで社内の雰囲気や仕事内容を知ることができ、安心して入社を決めました。
――グエンさんが就職活動で苦労した点や、どのように乗り越えたかをお教えください。
グエン先ほどお伝えしたように、就職活動時、使える日本語のレベルがまだまだだったので、日本語能力という点で苦労しました。日本語検定試験のN3には合格していたのですが、多くの日本企業がN1(新聞の論説・評論など複雑な文章が理解できるレベル)を求めており、書類選考で落ちてしまうことも多かったです。
しかし、英語力には自信がありました。加えて、ベトナムで貿易関係の仕事に従事した経験があるので、この点も採用してもらえた理由ととらえています。
吉本実は面接の段階で周囲から「本当に大丈夫か」という声もありました。けれど、日本語能力は働いていくなかでステップアップしていくだろうと判断。それよりも、以前貿易業務に従事していた経験や、やる気と自信がある点を高く評価し、採用しました。
採用後は、米の輸出業務に事業の立ち上げから取り組んでもらっています。取引先をゼロから探さなければならないなか、少しのことではくじけず、前向きに取り組むグエンさんを採用して本当によかったと感じています。今、グエンさんは新規取引先の開拓に奔走するとともに、海外市場の動向を踏まえた新商品の開発にも取り組んでいます。当社に欠かせない人材です。
――取り組みの成果をどのようにとらえていますか。また課題があればお教えください。
吉本そもそも輸出業務は、グエンさんのようにスキルを持った人材がいなければスタートできませんでした。加えて、採用活動を通して、留学生に日本の稲作文化や食文化を発信できたこともよかったです。今後、当社で活躍する外国人の社員を通して日本文化を発信していきたいと考えています。
課題は、在留資格の関係で輸出業務以外に携わってもらうのが難しいことですね。すべての業務が有機的につながっているので、他部署での経験が輸出業務にも活きてくる。他の業務も何年か従事できるような猶予期間のある制度になれば、より深く仕事を知り、面白さや新たな視点を獲得し、定着にもつながるのではないかと考えています。
――最後にメッセージをお願いします。
吉本外国人材、特に高度人材といわれる留学生たちは非常に優秀です。何のために採用するのか、その目的をはっきりさせ、明確に伝えることこそが採用成功の近道だと考えます。そして採用後は、企業が能力を最大限発揮できる環境をつくり、日本人には無いアイデアや視点で新たな仕事を創り出してもらう。ジョブ型を基本とした採用の方がうまくいくように感じています。
グエン外国人にとって日本での就職活動は大変です。私自身、日本語能力という点でかなり苦戦しました。それでも、自分の強みや企業で活かせる能力をアピールすれば、どこかにチャンスはあります。くじけず頑張ってください!