1. Home
  2. Kansai D&I News
  3. 建設業界の未来をつくるD&I推進 大阪・関西万博が示す新たな道――大林組 大阪本店建築事業部 大阪関西万博室部長 赤松 真弥 氏
Kansai D&I News
2024.10.24 オピニオン

建設業界の未来をつくるD&I推進 大阪・関西万博が示す新たな道
――大林組 大阪本店建築事業部 大阪関西万博室部長 赤松 真弥 氏

大林組 大阪本店建築事業部 大阪関西万博室部長 赤松 真弥 氏

大林組 大阪本店建築事業部 大阪関西万博室部長
赤松 真弥 氏

 1989年に大林組に入社し、開発部門を経て20年にわたり公共施設等の設計・建設・運営等を行うPFI事業に携わってきた赤松真弥さん。2017年の大阪サクヤヒメ表彰の受賞をきっかけに、働く女性の力になるための「サクヤワーキングコミュニティ」を設立。現在、大林組において大阪関西万博室部長としてウーマンズ パビリオン建設に取り組む赤松さんに、女性活躍に必要な視点を伺った。

イメージ画像

――これまで様々な仕事や役職を経験されていますが、共通してご自身が大事にされていることは何ですか。

 大事にしているのは、社会のために今できることを身近なところから始めるということです。開発やPFI事業の仕事に携わるなかで、自分一人でできることは限られている、他部署や他社の方と信頼関係を築き、力を合わせることで、チームの力を何倍にもできることを実感しました。またPFI事業では発注者に代わって公共事業を行うため、民間企業として利益を確保しつつ地域の方々や社会に貢献するという、いわば地域・公共・民間の三方よしの実現が求められます。自分が携わったPFI事業でチームの力で社会に貢献できるという実績を得たことによって、こうした考えに至りました。

――男性職場のイメージが強い建設業界も徐々に変わりつつありますが、建設業界をより多様な人材が活躍できる環境にしていくため、何が必要だと思いますか。

 基本的に女性を含むすべての社員が生き生きと活躍できる環境にする必要があります。建設業界では2024年度から時間外労働の上限規制が適用となり、一層の業務改善が求められています。働き方の工夫が必要という点では性別の違いはありません。

 たしかに、これまでの建設現場では長時間労働が一般的で、管理者が女性に無理をさせたくないと過度に配慮したことが、女性活躍が進みにくい要因の一つになっていたように思います。働き方改善が進むこれからは、性別に関わらずすべての社員に向けてとなりますが、部下一人ひとりの個性に寄り添い、成長できる業務に任せるよう、管理者が意識を変える必要があると思います。

 そういった社会環境の変化を受け、大阪・関西万博のウーマンズ パビリオンの施工管理は女性チームが担当しています。ウーマンズ パビリオンではドバイ万博日本館の建材をリユースする取り組みをしており、現場所長はドバイ万博日本館の経験を持つ男性ですが、その方以外は女性です。女性の施工管理者が少ない現状はありますが、ウーマンズ パビリオンの工事現場が女性による施工管理の実績となり、建設での女性活躍を牽引することを期待しています。

――サクヤワーキングコミュニティや大林組大阪本店の女性ネットワーク設立など働く女性をつなげる取り組みに力を入れておられますが、取り組みのきっかけと活動内容をお教えください。

 私自身は周囲の助けを得ながら仕事や家庭をやりくりし、多忙ながらも充実していましたが、2017年の大阪サクヤヒメ表彰活躍賞の受賞をきっかけに社外の人と交流する機会ができ、建設業は女性が働きにくい業界と考えられていることに気づきました。建設業の一員として、働く女性の一人として何か行動したいと考え、大阪サクヤヒメ受賞者有志とともにサクヤワーキングコミュニティを設立しました。女性が働き続ける力になることを目的に、働く女性が自分のキャリアを考えるイベントの開催やプライベートを充実するWILL(したいこと)を見つける共創チャレンジなどの様々な活動をしています。

 また、その活動を通じてコミュニティの重要性に気づき、2020年に「NOON」という大阪本店の全女性社員が参加する社内ネットワークを、大阪本店長に後押しを得て社内有志と立ち上げました。大阪本店の女性社員は350名ですが、当社は女性比率が低く、働く上での悩みがあっても周囲に相談できる人が少ないという現状がありました。それを改善するためにオンラインで全女性社員をつなぎ、匿名で相談できる仕組みを用意したり、職場や社員を紹介するニュースレターや育児・介護をテーマにしたインタビュー記事を配信して、社員目線で会社や制度を理解する情報を提供しています。

 現在は、九州、名古屋、広島、四国など他支店の希望者も参加しており、転勤しても参加できるネットワークになっています。

――D&Iの観点から大阪・関西万博に期待することをお聞かせください。

 ウーマンズ パビリオンは女性活躍推進をテーマとしており、大阪・関西万博の開催によって、より一層女性活躍が進んでいくことを期待しています。ドバイ万博では、開催国であるUAEのジェンダーギャップ指数が2020年の120位から2021年に68位へと大きく伸びました。日本の順位は現在146カ国中118位という低い数字です。政治分野と経済分野のスコアが低いのが原因です。2024年に政治分野は0.057から0.118に改善されましたが、経済分野は大きな改善にはなりませんでした。女性の管理職数と男女の賃金格差が課題です。

 女性管理職を増やすには多面的な取り組みが必要で、会社風土や社会とともに、女性自身も働くことの意識を変えることが必要かもしれません。一人ひとりが望む働き方は様々ですが、リーダーは楽しくやりがいがある、チームとともに仕事をすることは自分が成長できる大きな機会であるというメッセージを私達世代がもっと伝えていく必要があると思います。また、自然とリーダーになりたいと思える環境づくりも私達世代の役割であると考えます。

――働く女性へメッセージをお願いします。

 私自身は、みなさんが働きがいのある仕事によって自分らしい働き方ができる環境づくりに向けた取り組みを続けていきます。

 みなさんは、日々忙しいと思いますが、自分自身が何をしたいのか(WILL)、何ができるのか(CAN)、何をしなければならないか(MUST)を改めて考えて、少し行動に移してみてください。社会は少しずつ変化しています。変化を感じるには多様な人と出会う機会を増やすことが大切です。みなさんが多くの方と知り合い、新しい考えに刺激を受けていただくことを期待しています。