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Kansai D&I News
2025.3.28 企業の取り組み最前線

男性の育児参加を後押しする職場づくり ~家事・育児のシェアに向けた取り組み~
――大和ハウス工業

大和ハウス工業 経営管理本部 Well-being推進室 DE&I推進グループ グループ長 長谷川 満子 氏

大和ハウス工業 経営管理本部 Well-being推進室
DE&I推進グループ グループ長

長谷川 満子 氏

大和ハウス工業 経営管理本部 Well-being推進室 DE&I推進グループ 主任 池田 昇平 氏

大和ハウス工業 経営管理本部 Well-being推進室
DE&I推進グループ 主任

池田 昇平 氏

※所属・役職は2025年取材日時点

「家事シェアハウス」の提案などを通じ、家族で家事をシェアする重要性を発信している大和ハウス工業。社内でも、男性を主な対象として家事・育児参画を促す取り組みを進めている。DE&I推進を担当する長谷川満子さん、池田昇平さんに、現在の取り組み状況や課題を聞いた。

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――男性を主な対象とした家事・育児参画に取り組んだきっかけや、基本的な考え方をお教えください。

池田当社では、働き方の多様化が進む中で、従業員が自分らしさを発揮しながら活躍できる職場環境を整えたいと考えています。また、当社は住宅メーカーとして、お客様の暮らしに寄り添い「家事を家族でシェアする」という考えを広く発信してきました。そのため、社内においても、従業員がパートナーや家族と家事・育児をシェアできる環境を整えることを目指しています。

 昨年2月に社内でアンケート調査を実施したところ、6歳未満の子どもがいる従業員の平日の家事・育児時間について、男性は1〜2時間、女性は4時間程度という回答が最も多く、依然として大きな男女差があることが明らかになりました。家事・育児は育休を終えたあとも続きます。育休の取得を推進するだけでなく、育休後も男性が継続的に家事・育児に参画し、働き方を見直すきっかけにしてほしいと思っています。それが結果的に、育児している社員にとってだけでなく、事情や制約によらず活躍できる職場環境につながると考えています。

――具体的に力を入れている取り組みを教えてください。

池田育休取得を希望する従業員が、職場全体で早めに準備できるよう支援しています。その一環として導入したのが「プレパパ・プレママ登録フォーム」です。特に男性社員は育休取得希望期間の直前になって申請するケースが多く、職場の調整が難しいという課題がありました。そこで、早い段階で申告してもらうことで、周囲が準備やサポートをしやすくなるようにしました。具体的には、ご本人またはパートナーが妊娠し、安定期に入ったタイミングをめどにホームページより登録します。登録された方と上司向けに、HR部門からさまざまな情報を発信する仕組みとしています。

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 また、これから育児が始まる従業員を対象に、「ライフキャリアバランス面談」を実施しています。この名称には、従業員一人ひとりが仕事を含めたライフキャリアを前向きにとらえてもらえるよう、会社としてサポートしたいという思いが込められています。面談では、ご家族の状況を踏まえながら、今後の働き方について上司とすり合わせしてもらいます。

 「充実した仕事と育児のためのハンドブック」も作成しました。育休に関する制度や手続き、社会保険やお金に関する話まで、あらゆる情報を集約したハンドブックで、HR部門のホームページに掲載しています。就業規則やHR部門のホームページ、通達などに分散していた情報を一つにまとめたものであり、使いやすいと好評です。また、自分の目的に応じて、どのページを参照すればよいのかを、できる限り理解しやすいように構成を工夫しました。

図2

 さらに、育休復職後も家事・育児に積極的に参加しながら、より柔軟に働ける仕組みづくりにも力を入れています。自律した働き方やワークライフバランス実現のため、2021年からコアタイムのない「スーパーフレックスタイム制度」を導入しました。また、休職中・復職後の方向けに「育休プチMBA」という社外の学習プログラムを活用し、復帰時のマインドセットや、仕事と育児を両立する上での困りごとへの対応方法などを学ぶ機会を設けています。他の会社のパパやママと一緒に学べる環境で、参加した当社の従業員も熱心に受講してくれています。

――業務調整などを行う管理職層のフォローはどのように行っているのでしょうか。

池田上司も含め、周りのメンバーの負荷を軽減するためには、職場全体での早めの準備が大切だと考えています。先述の「プレパパ・プレママ登録フォーム」による早期情報取得の仕組みは、業務調整を行う上司のフォローのためという側面もあります。また、関西企業のDE&I担当者が集まる「ダイバーシティ西日本勉強会」で実施している「イクボスセミナー」には当社も企画より参画し、管理職から参加者を募って複数名参加しています。部下の仕事と生活の両立を応援しながら、自分自身も仕事と私生活を楽しむ。そして、仕事で成果も出す上司のスキルを学ぶものです。セミナーの中では、グループになって「休職者が発生した職場で、休職者の業務を誰にどう引き継ぐか」を考えるケーススタディーも実施しています。また、自分自身のライフキャリアを見つめなおすワークもあるので、マネージャーとしての視点だけでなく個人の生き方の視点からも学びを得られる内容なのではないかと思います。

――取り組みを進めるなかで、どのような変化がありましたか。また、取り組みの成果をどのようにとらえていますか。

池田男性の育休取得率は、2021年度までは30〜40%台でしたが、2022年度から60%台に上昇しました。また、平均取得日数についても、2021年度は8.4日だったのが、2023年度には27.1日に増えました。実際に家事や育児にどの程度関わることができているのか、また、働き方や職場環境にどのような変化が生じているのかについては、今後、聞き取り調査やアンケートを通じて把握していく予定です。

 また、「プレパパ・プレママ登録フォーム」への申請数、「育休プチMBA」への参加率は増加してきています。早い段階で準備を行い、復職後の活躍に向けて学んでいこうという当事者のマインドの変化が現れているのではないかと思います。

長谷川取り組み自体の結果ではありませんが、アンケート調査の中で、男性が育児に関わることに対して好意的な社員が多いと明らかになったことは、一つの成果だと思っています。マネージャー層を含めて、男性の家事・育児参加を前向きにとらえている社員が多いと、社内に知らせることは大切ですし、そう感じてもらえる施策を考えているところです。

――今後に向けた課題などがあればお教えください。

池田大きく3つあります。1つ目は、休職する社員以外のメンバーにかかる負担の軽減や、それに対する手当についてです。当社のグループ会社の制度も参考にして施策を検討中です。また、引継ぎの早期化や可視化の方法もセットで考えていく必要があります。

 2つ目は、時間を柔軟に使い成果を出すことに対して、肯定的な職場風土の醸成です。フレックスタイム制を導入しているとはいえ「周りに気を遣い、利用しづらい」という声も多く、十分活用できているとは言い難い状況です。より柔軟に時間を使えるようになれば、育児や介護など時間に制約のある人もより働きやすくなり、結果として成果も出しやすい環境になると考えられます。

 3つ目は、「イクボス」という考え方の浸透です。部下と自分のワークライフバランスを大切にしつつ、成果もきちんと出すというのは、なかなか容易ではありません。部下には配慮しても、自分のワークライフバランスは後回しという管理職も多いですよね。それぞれの人生と仕事の成果の両方を大切にするという考え方の浸透のために、啓発の機会を作っていきたいです。

――ダイバーシティ推進に関し、今後特に取り組んでいきたいことを教えてください。

長谷川会社としてダイバーシティに関する方針を出しても、それだけで社員一人ひとりに浸透するわけではありません。すべての職場にダイバーシティが浸透するよう、現場の声も聞きながら、粘り強く発信していくことが大切だと思います。

 長時間労働に依存しがちな働き方を変えていくことは、女性活躍の観点からも重要です。そのためには、一人ひとりの性別役割分業意識にも働きかけていく必要もありますし、一社だけの取り組みには限界があります。育休でいえば、従業員のパートナーは別の会社の一員であったりします。「ダイバーシティ西日本勉強会」のような形をはじめ、各社が協力して、関西全体での取り組みや、社会を変えていく取り組みにつなげていければと思います。