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Kansai D&I News
2026.7.31 オピニオン

変化をおそれずチャレンジし、道を切り拓いて次へバトンをつなぐ
――ロイヤルホテル 取締役 執行役員 中川 智子 氏

ロイヤルホテル 取締役 執行役員 中川 智子 氏

ロイヤルホテル 取締役 執行役員
中川 智子 氏

ロイヤルホテル 取締役 執行役員の中川智子さんは、同社初の女性総支配人となるなど、社内の女性活躍の先頭に立ってきた。中川さんに、これまでのキャリアやD&Iへの考えについて聞いた。

――これまでのキャリアと、キャリアを通してご自身が大事にされている考え、信念をお教えください。

 外国の方とたくさん接する仕事を希望しロイヤルホテルに入社後、フロントやコンシェルジュを経験し、当社で女性初の営業職に就きました。さまざまなポストを経て、都市センターホテルに当社初の女性総支配人として就任。2017年には女性初の執行役員となり、リーガロイヤルホテル東京の代表取締役兼総支配人を経て2022年にリーガロイヤルホテル大阪の総支配人に就任しました。2026年4月からはサステナビリティ推進室の担当役員を務めています。

 私が入社したのは男女雇用機会均等法施行前で、女性はフロントに配属され、数年で寿退社するのが普通という時代でした。その頃から大切にしていたのは、一つずつでも壁を打ち破っていくことです。大好きだったコンシェルジュの業務からハードな営業に異動になった時は「私が女性初の営業職になることで、この先、営業をやりたい女性にバトンを渡せる」と考えました。そして、子供が3歳の時に海外でのホテル立ち上げ事業に携わりました。小さい子供のいる自分に、会社が「1年間海外で仕事をしないか」と声をかけてくれたことに驚きましたが、せっかくのチャンスなのだから挑戦したいと思い、家族とも相談の上、単身で赴任しました。その頃から、当社には女性に活躍の場を与えるという風土が芽生えていたと思いますし、最初の道を切り開くのは大変ですが、誰かが道を切り拓くことで以前は難しかったことが当たり前になっていくと考えました。

 2008年に宿泊部長に就任したときは、当時の社長から「女性たちに長く活躍してもらうにはどうしたらいいか考えてほしい」と言われ、女性活躍推進に向けて取り組みました。その後、産休・育休の制度が充実していったこともあり、「結婚・出産しても働き続けられる」という風土に変わっていきました。私は「女性初の〇〇」という役職を多く経験しましたが、当たり前と思われていることを変えるには、誰かが最初の一人になることが必要です。私の後には次の女性総支配人も生まれています。一つずつ壁を破り、次にバトンをつないでいくことが大切だと考えています。

――リーガロイヤルホテル大阪初の女性総支配人にご着任された当時の思いをお聞かせください。

 東京オリンピック開催予定の前年にリーガロイヤルホテル東京の総支配人に就任し、夢にあふれて東京に赴任しましたが、残念ながらコロナの影響で延期の末、無観客開催となりました。その不完全燃焼の思いを、大阪・関西万博を控えた大阪でやり切りたいという意気込みで就任しました。

 一方で大きなプレッシャーも感じていました。リーガロイヤルホテル大阪は90年以上の歴史を持つ当グループの旗艦ホテルであり、各界の重鎮の方々も多くご利用になる中、若輩の女性総支配人がどう受け止められるか不安もありました。しかし着任後のご挨拶に伺うと、その方々が「ロイヤルホテルにも新しい風が吹いたんだね」と言ってくださり、感謝するともに時代の変化を感じました。ロイヤルホテルのおもてなしにこれまで以上に磨きをかけるために、女性の観点だからこそできることがあるかもしれない、自分のできることを精一杯出しきりたいと思いました。

――女性をはじめ多様な人材の活躍に向けたD&I推進の取り組みをお聞かせください。

 ホテル・観光業は女性の志望者が多く、当社も現在新卒入社の約6割が女性です。結婚・出産しても仕事を続けるのは当たり前になってきたものの、女性管理職比率は現在12%程度であり、女性管理職を増やしていくことは課題です。そこで、管理職をめざすことを含め、女性たちがキャリアをあきらめないで活躍できるよう、子どもが小学校6年生になるまで利用できる時短勤務制度など働きやすい環境づくりを進めています。その一つが2013年にスタートした、育休から復帰する社員の不安を払拭し、サポートする「育児休職者懇親会(写真:下)」です。育休取得中の社員が集まり、同じく育休から復帰した先輩の体験や経営層から会社の現状を聞く懇親会を年に1回開催しています。お子さんやご家族も一緒に参加できるほか、実際に育休復帰後に管理職へ登用された社員など、ロールモデルとなる社員の声を直接聞くことで、「自分も同じようにめざしたい」と考える社員が増え、意欲の向上にもつながっています。さらに2022年にはRWC(Royal Women's Committee)という部門横断の組織を立ち上げました。社内公募などで任命された女性メンバーが月1回集まり、女性が働きやすい環境づくりに関してテーマを決め、1年かけて議論し、実践につなげています。

 また、障がいを持つ社員の活躍についても、障がい者雇用促進をめざす「チャレンジドプロジェクト」において、サポートを行っています。
 さらに、2025年の大阪・関西万博を契機に、外国籍スタッフの採用が増えました。今後の新規ホテル開業やインバウンド対応のためにも、外国籍スタッフの育成が一層重要となります。文化・宗教的な習慣の違いなどに配慮が必要なこともありますが、個々の事情を理解して働き方を調整するなど、柔軟に対応しています。

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「育児休職者懇親会」の様子

――多様な人材が活躍し、企業の成長につなげていくために何が必要だとお考えですか。

 外国籍スタッフが増えたことで、現場では、スタッフ同士が互いの得手・不得手を補い合う姿も見られます。このようなスタッフの多様性や融合は、今後のホテルにはなくてはならないものだと思います。

 4月に発足したサステナビリティ推進室では、外国籍スタッフ側と日本人スタッフ側それぞれに、日頃困っていることのヒアリングを始めました。定期的な日本語研修をはじめ、外国籍スタッフのキャリアアップのためのサポートも視野に入れています。女性活躍と同様に、外国籍スタッフのマネージャーなど、ロールモデルとなる社員が増えてくれば、「自分たちもなれるんだ」と皆の意識が変わり、後に続く人が出てくるでしょう。国籍を問わず、優秀な人たちにずっとロイヤルホテルで働きたいと思ってもらえるようになるとうれしいです。

――今後、中川さまご自身が力を入れていきたいことについてお聞かせください。

 次世代の人材を育成し、次の女性役員誕生へとバトンをつないでいくことが私にとっての大きなミッションです。部長職の女性はかなり増えていますが、役員は現在、私一人です。女性の総支配人がいて当たり前の状況になり、「私もやってみたい」と後に続き、経営層への参画もめざすような女性人材が生まれるよう、後輩たちを育てていきたいです。

 また、国際感覚を持つことも、私が推進していくべきことの一つだと考えています。リーガロイヤルホテル大阪がIHGホテルズ&リゾーツとの協業開始時に総支配人を務めた経験から、外資系ホテルのシステムや運営の仕方にも多くの学びを得ました。そういった知見も皆で共有し、経営に国際感覚やグローバルな視点を取り入れることを推進していきたいと思います。

――後輩へのメッセージをお願いします。

 自分で「ここまで」と枠を決めてしまうと、それ以上先には進めません。何事もチャレンジし、もしも上手くいかなかった時には、違う方法を考えればいいのです。自分で枠を決めずに、まずは好奇心を持ってチャレンジしてみてください。また、変化をおそれては何もできません。例えば、当ホテルも90周年を迎える中で外資系ホテルチェーンと協業するという大きな変化がありました。変化をおそれず前に進むことを大切にしてほしいです。

 「意志あるところに道は開ける」という言葉があります。「こうしよう」と強く思えば、道は次第にできていくものです。意欲ある優秀な方には、「私はこうしたいんだ」という意志を持って、次に続く人にバトンを渡していってほしいと思います。