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Kansai D&I News
2026.7.31 企業の取り組み最前線

経験豊かなシニア人材の活躍が支える企業の持続的成長
――大和ハウス工業

大和ハウス工業 経営戦略本部 人事部 人事グループ グループ長 木村圭佑さん

大和ハウス工業
経営戦略本部 人事部 人事グループ グループ長

木村 圭佑 さん

大和ハウス工業では、シニア人材の活躍に向けた制度整備を進めている。経営戦略本部 人事部 人事グループ グループ長の木村圭佑さんに、「アクティブ・エイジング制度」の取り組みなどについて聞いた。

――シニア人材の活躍に向けた制度整備(定年延長・処遇改善等)に取り組まれた背景についてお教えください。

 背景としては、大きく二つの課題意識がありました。一つは、従業員の年齢層の偏りです。新卒採用を主軸としてきた当社ですが、業績などにより新卒採用人数は増減し、従業員数の少ない年代が発生していました。持続的な事業運営と人材確保のためには、シニア人材にも活躍してもらえる社内環境整備が必要でした。

 もう一つは、技術者不足の問題です。建設業に必要な技術者・有資格者を確保していくためには、採用と育成だけでなく、シニア人材を含め、社内に蓄積された経験や専門性をどのように事業に生かしていくかという視点も不可欠でした。そういった背景から、60歳以降も働きがいを持って勤務を継続してもらえるよう、シニア人材の活躍推進のための制度整備を進めていきました。

――シニア世代の活躍に向けた具体的な取り組み内容をお教えください。

 まず定年に関しては、2013年度に65歳定年制を導入し、2022年度には役職定年制を廃止し、60歳以降も処遇を維持するよう制度変更を実施しました。さらに2025年度には選択定年制を導入し、全国職(転勤可能な従業員)については従業員自身が定年を65歳・67歳から選択できるようにしました。

 また、定年後の嘱託再雇用の仕組みを整備し、2015年度に原則70歳まで勤務を継続できるアクティブ・エイジング制度を導入しました。ねらいは、労働力確保はもちろんですが、若手への技術・技能の伝承、それまで蓄積してきた人脈を生かして当社の利益に貢献してもらうことです。さらに、定年後のキャリアの方向性を示すことで、モチベーションを維持して働き続けてもらいたいと考えています。

 2015年度のアクティブ・エイジング制度導入時、公的年金との関係等もふまえ、週4日勤務・月20万円と設定しましたが、2023年度に制度改訂を行いました。現業の技術職に関しては、現役時に近い働き方を継続できるコース(週5日勤務、給与は最大で月35万円)も設けました。

 定年後の配属先は、各自の強みを生かして活躍できる場へのマッチングが重要です。代表的な例としては、営業職であれば人脈と経験を生かして顧客とのリレーション構築や若手への助言などを行う業務、技術職であれば安全管理のチェックや指導を行う業務などを担ってもらっています。

 制度整備と併せて、従業員自身に今後の働き方やセカンドライフについて考えてもらえるよう、60歳を迎える職員を対象に「ライフデザイン・セミナー」を実施しています。定年後に当社で働き続ける場合の選択肢を説明するとともに、外部講師による講義を通じて、定年後のマネープラン等についても具体的にイメージできる機会としています。

 アクティブ・エイジング制度を利用して、定年後も当社に残る社員の割合は、2024年度で57%です。制度導入から10年以上が経過し、制度利用者が身近な存在となっていることで、若手社員にとっても、将来の働き方をより具体的にイメージしやすくなっていると考えています。

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――シニア世代活躍を進めたことによる成果をお教えください。シニア世代に加え、若手・ミドル層のキャリアや組織運営への好影響はありますか。

 50歳以上のキャリア採用人数が、2022〜2024年度の3年で3倍近く増えました。一般的に定年後の再雇用では、どうしても給与水準が大幅に下がることが多いなか、当社では役職定年の廃止や待遇面も含めてシニア人材が活躍しやすい制度整備を進めてきました。経験豊かなキャリア人材にとっての魅力の一つになっており、人材の獲得につながっているのは、成果の一つといえます。

 社内においては、先述のようにシニア人材が若手をサポートし、アドバイザーやメンター的な役割を担うことにより、現場の仕事が円滑に進むという好影響が見られます。シニアの再雇用は短期的には人件費面での負担としてとらえられる面もありますが、中長期的に見れば、技術伝承や人脈維持が業績の伸びにつながると考えています。

――今後シニア人材雇用における中長期的な人材戦略や人材ポートフォリオをどのように見直していく必要があるとお考えでしょうか。

 事業ポートフォリオの変化に対応して、人材ポートフォリオを変化させていくことが課題です。当社はもともと住宅メーカーですが、現在の事業領域は住宅以外に、商業・事業施設、環境エネルギー分野などに広がっています。一方、人事評価や報酬の制度を見ると、特定の領域における経験の積み上げを重視するものになっています。これまでは特定分野での経験・知見を生かしてもらうことが事業成長と連動していましたが、今後、事業ポートフォリオが急速に変化していくことが予測されるなか、領域をまたぐ経験や新しい発想、学び続ける姿勢がより求められるようになります。シニア人材の活躍においても同様であり、65歳を迎えてから急に新たな領域での活躍を求めるのではなく、ミドル世代のうちから多様な経験を積めるよう、グループ全体で人材の流動性を高めていくことが重要だと感じています。

――今後D&Iで力を入れていきたいことをお聞かせください。

 当社のD&Iの取り組みでは、どんな人も働きやすい環境を整えることに力を入れています。例えば、子育て中の従業員に対しては、育児休業や時短勤務等の制度を充実させるほか、企業としても少子化対策に取り組む意味で、不妊治療や卵子凍結にかかる医療費を補助する制度も設けました。障がい者雇用に関しては、障がいのある従業員が安心して力を発揮できるよう、業務内容や職場環境を工夫しながら、チーム単位で受け入れる取り組みも進めています。女性活躍については、住宅営業など、土日勤務が多い職種では、育児等との両立に課題が生じやすく、キャリア形成を支える環境整備が重要だと考えています。女性管理職をどう増やしていくかということは課題であり、今後も優先度を上げて取り組んでいきたい部分です。

 近年、DX等による省人化の流れもありますが、企業成長を担うのは人であり、人材確保は継続して取り組んでいかなければならない課題です。シニアも含め、どんな人でも活躍できる環境を会社として整備していくことに、今後も力を入れていきます。