10月6日(金)、女性のエンパワーメント交流会を開催、会員企業から女性の役員や部長など30名が参加した。今井雅啓 伊藤忠商事専務理事を迎え、「個人的経験に基づくD&I考察」と題した講演を実施した後、柿原アツ子 D&I専門委員長のファシリテートのもと、質疑応答・意見交換を行った。今井氏は、ロンドンやルワンダに駐在した経験をふまえて、「多様な宗教、民族、考え方があると知ることが人生を豊かにし、知識と経験を蓄え、物事を違う目で見ることで視野が広がる。また、Ⅾ&Iに取り組むことは、個々の組織や企業の経済的な力を伸ばすことにつながる」と述べた。
【講演要旨】
「個人的経験に基づくD&I考察」
大学時代にフランスへ留学しており、入社後はアルジェリア駐在員や、欧州総支配人としてロンドン駐在、その後ルワンダ駐箚特命全権大使等を経験した。アルジェリアでは宗教による文化の違いを、ロンドンでは様々な民族が入り乱れ、日本人として身を置いても違和感がないほど混沌とした中で調和が保たれている環境を体験した。そして、ルワンダはジェンダーギャップ指数の順位の高さにも表れているようにダイバーシティ先進国。国会議員の半数以上が女性等、女性の社会進出が盛んであった。D&Iに関しては「Leave no one behind」という言葉がよく聞かれ、特に発展途上国の貧困層を対象としたイベントで使われていたが、日本のような先進国においても同じように考えなければならないことだと思う。
海外に駐在した際の経験から、D&Iに取り組むことは組織や国の経済的な力を伸ばすことにつながると思っている。女性や外国人材等、多様性を尊重しながら経済力の一つとして組み入れることは、組織を強くするために重要である。文化、慣習を変えていくことは簡単ではないが、伝統を保ちつつ、一つ一つ課題を解決し、日本もダイバースな国になっていかなければならない。伊藤忠商事の取り組みとしては、朝型勤務の開始に始まり、在宅勤務の導入など女性の働き方が改善され、結果として出生率も上がっている。女性のライフイベントをスムーズにアシストするには、各企業が女性の活躍しやすい働き方や、出産に伴うイベントを支援することが大事ではないかと考えている。また、今後は女性特有の健康課題を解決するサービスを総称するフェムテックに関するビジネスも取り組んでいこうという動きがある。
【質疑応答・意見交換】
- 社員が出産や育児、家事等のこともあり、なかなか一歩を踏み出せないという課題がある。海外ではそのような問題をどのように捉えられていたのか。
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定形フォーマットがあるわけではない。例えばルワンダ大使時代の部下だった女性は、海外駐在を多く経験しておられたが専業主夫の夫がいたり、海外へ単身赴任して子育てをしている場合もあった。様々なパターンがあり、最大公約数になる解はないが、昇進への影響がない復職制度や、休暇制度等、組織が社員を守る制度が必要だと思う。必要なものの全てを国が用意することは不可能。そのため、企業が最低限で必要なところをできるだけ拡充していく形で努力する必要がある。
- 多様性の中で生きてきたからこそ、培った考えや人生観があれば教えてほしい。
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日本では多くの人が多様性の中で働いていない環境にあると思うが、日本の外からでないとわからないことがある。日本にずっといたら、日本の特殊性、美点や欠点に気づかなかったと思う。海外に身を置いたことで、日本にある歴史や伝統が全てではないと気づいた。色んな宗教、民族、考え方があると知ることが人生を豊かにする。そして、知識と経験をたくさん蓄え、物事を違う目で見ることで、視野も広がったと思う。